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127話 大切な居場所⑲

地売屋でのやり取りがすべて終わると、俺は土地を買い叩かれ奪われた人達を周り、権利書を返して行くことにした。


予想外だったのは、ほとんどの人達が売却した金額を手元に残しており、権利書を持っていくと涙を流しながら俺が支払った3割増しの代金と同額を用意してくれたことだ。


事情を聞くと、弱味を握られて脅迫をされたり、嫌がらせに耐えられなくなって泣く泣く売ることになったという人達ばかりだった。


もっときついお仕置きをした方が良かったのかもしれないな··と思いながらも、不動産を取り戻したことで感謝の言葉をかけられる度に俺の心は癒された。


「ギルマス補佐様は神様のような人だ。この世もまだ捨てたものじゃない。」


そうつぶやく老人の言葉を聞いた時には自分の存在意義が高まった気がした。


なにせ化物扱いをする奴も多いことだし···。




最後に立ち退きを強要されている孤児院に行った。


「本当に···本当にここにいて良いの?」


孤児院を運営している人に事情を話して無償で権利書を渡そうとしていると、孤児の何人かが近くに来てそう言った。


目に涙を浮かべながらそんなことを言う子供達の頭を撫で、


「大丈夫だ。何かあったら俺が守ってやる。だから強くなれ。みんなを守れるくらいにな。」


と自然と口にしていた。


「本当にありがとうございます。ギルマス補佐様のご厚意は一生忘れません。」


泣き崩れる人達の中にいるのは苦手だった。感謝の言葉を繰り返されるが湿っぽいのは遠慮したい。


俺は子供達に手を振ってその場を後にした。




孤児院には亡くなったスレイヤーの子供達もいるという。


公的な補助金だけで運営をしており、経済的にはかなり厳しい状態と言えた。地主の好意で無償で土地を提供されていたが、その地主が老衰で亡くなり、相続人が孤児院の立ち退きの手間も含めて安く売却したらしい。


孤児院の運営者は権利書を受け取らなかった。


「これはあなたに所有しておいて欲しい。」


と言って礼だけを述べてきたのだ。


孤児院は広い土地だ。

今後も利権のために狙う奴が出てくるかもしれない。そう考えると、渡さない方が良いとも思えた。


日はすでに暮れかかっていたが、俺はギルドに戻ることにした。






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