第4章 朋友 「berserkr④」
「魔人か。前回の事件から考えると厄介だな。しかも、今回は悪魔王の力を継いでいる可能性もあるのか···。」
重い空気を打ち破ったのはアッシュの一言だった。
「普通の軍では対抗できないだろうね。」
魔族と同等の力を持つ魔人。今回はそれに悪魔王の力が入り混じっている。スレイヤーが出張ったとしても対抗は難しいだろう。
「南部の小国は、魔人に支配されていると考えた方が良いのか?」
「そう考えた方が良いと思うよ。」
「それは水面化でのものか?それとも、国全体が大々的にそうなっていると考えるべきなのだろうか。」
俺の質問にビルシュは答えられなかった。
情報源との連絡が途絶えた今、答えられないのだろう。
「タイガ様、まさかお一人で行かれるつもりですか?」
俺の言葉に反応したのはマルガレーテだった。
こういった場合の対応策をすぐに思いつくのは彼女の経験値だろう。まずは偵察に赴いて情報を収集するのは、軍にとってもセオリーとなる。
「他にもやらなければならない事がある。各国の首脳への連絡はビルシュに任せるとして、ここにいるメンバーでチームを分けて行動するべきだろう。その中でも、偵察は俺の得意とする分野だ。」
マルガレーテが俺をじっと見た。
客観的に考えても、俺の話す内容は効率的だ。
マルガレーテは俺の事を心配してくれているのだろう。
短いつきあいだが、そういった優しさがある事には気づいていた。しかし、今は適材適所で動くのが最適解といえる。
「それは少し待ってもらえないかな。」
そこに割り込んだのはビルシュだった。
「なぜだ?」
南部の小国を救うのは手遅れかもしれない。だが、近隣諸国への侵攻が始まると、被害が拡大するだけでは済まない。侵攻された国の騎士や兵士達が、人体実験を受けて新たな魔人となる可能性が高いのだ。
「君には旗印になってもらわなければならない。」
「旗印?」
「このシニタに接する三国は、表面上はうまく調和を保っている。しかし、強大な敵が現れた時に、各国が意を合わせて立ち向かえるかといえば難しいだろう。外交でもいろいろと摩擦はあるようだし、騒乱時には互いにマウントの取り合いを行う。利に走る貴族も多いはずだ。だから、君には···いや、君達にはこの戦いの旗印になってもらう。」
「俺たちに三国を牽引しろと?」
「正確にはアトレイク教が聖戦として認定した戦いに、berserkrとなって意思を表明してもらいたい。」




