第4章 朋友 「berserkr③」
「僕にもいろんな情報網があってね。大陸中に調査をかけていた。」
ビルシュはゆっくりと語りだした。表情は真剣そのもので、これから話す内容の深刻さを物語っている。
「その網に引っかかったのが、南部の小国における人体実験なんだよ。」
「人体実験?」
嫌な予感がした。
かつて、魔族の血で魔人化した者が数名いる。
そいつらは魔族と同等の力を持ち、人間としての感情を持ち合わせていた。
考えようによっては魔族よりも厄介といえる。生まれながらに強者である魔族には油断が多い。だが、元人間である魔人は急激につけた力に驕らなければ、姑息な手段も厭わずに行使する可能性があるのだ。
「君はかつて、魔人化した人間を相手にしたことがあったよね。」
やはり予想が正しいようだ。
ここで魔人の話が出るということは、南部の小国に魔人化した者がいるという事だろう。
テトリアが言っていた置き土産とはそういう事か。
「何人が魔人化したのかわかるか?」
ビルシュが深いため息を吐いた。
「たぶん、数百人から千人くらいの規模だと思う。しかも、今回は魔族だけじゃなく、悪魔王の血も混じっているらしいよ。」
「事実か?」
「事実だ。」
そうなると、厄介どころの話ではない。
悪魔王の強さの者が何体もいるとなると、加護者が揃っていても厳しい戦いになるだろう。
「可能なのか?人間が魔族の血を体内に入れるだけでも拒否反応が起こり自滅する。それに適応できた者だけが魔人化したのではないかと思っていたが、それを悪魔王の血でするとは。」
「南部の小国にもアトレイク教の信者がいる。その中には国の重鎮もいたんだよ。そこからの情報だから間違いないと思う。」
「その信者はどうしている?」
「今は···連絡がとれなくなった。」
何かあったのだろう。
直接詳しい内容を聞くのは難しいといえる。
「もしかして、魔人化した奴に悪魔王の血を与えたのか?」
そうだとすると、人間が悪魔王の血を体内に入れるよりも成功率は上がるのかもしれない。
「ご名答。その通りだよ。数十に一体くらいの割合で適合したのじゃないかと聞いている。」
「最初に魔族の血を与えられた人間はどのくらいいる?」
「詳しくはわからない。ただ、師団単位で人が消えたとも言っていた。」
師団というと、国や時代にもよるが6000から2万人規模だ。
その規模の人間が魔人化のために魔族の血を投与され、さらに悪魔王の血を体内に入れたとすると、適合できずに犠牲となった者はとんでもない数にのぼるだろう。




