第4章 朋友 「berserkr②」
「やぁ、元気そうだね。」
シニタに潜伏していたのか、ビルシュはすぐに姿を現した。「真実を探るために旅に出る」と言って姿を消していたはずだが、本当に適当な奴だ。
「街を出たと聞いていたが、すぐそばにいたのか?」
「君が姿を現す予感がしていたから戻ってきたんだよ。」
「予感ね。かつての仲間が現れたが、それに関与していると疑われるとは思わなかったのか?」
「え···と、それは僕がテトリアと未だにつながっているとでも言いたいのかな?」
「客観的に見たら、そう考える者もいるという話だ。」
少しむっとしたようだ。
さすがに、そんな疑われ方をされるのは本意ではないのだろう。
「もしかして、君もそう思ってる?」
「俺は人の悪意を見分けられるからな。個人的にはそうは思っていない。ただ、悪意というのは自覚があって初めて生まれる感情だ。本人が正しいと思っている凶行は判断がつきにくい。」
場にいる者達、特に教会関係者からは厳しい視線を受けていた。
「まさか、僕がそんな事をするはずがないだろう。」
「一般論を言っている。どう思うかはそれぞれの判断だ。日頃の行いが判断基準になることも多いから、気をつけた方が良いとは思うがな。」
自分の日頃の行いに、思い当たる事が多々あるのだろう。ビルシュは汗をたらたらと流していた。
これが良い薬になれば良い。
普段からクレアや大司教に苦労を背負わせている自覚はあるようだ。
「反省するよ。君はどうも苦手だな。」
「教皇という立場が、周りの者の意見を阻害しているんだ。もっと空気を読んだ方がいい。」
「わかった。今後は慎むよ。でも、テトリアと今の僕には接点はない。ここに戻ってきたタイミングが重なったのは、あくまで偶然だからね。」
「その弁解は教会の人達にすれば良い。それよりも、何か話があるんじゃないのか?」
「ああ、そうだね。君の威圧で忘れてしまいそうだったよ。さすがはグレートプレッシャーだ。」
嫌な2つ名を出さないで欲しい。
マルガレーテやファフが苦笑いをしているじゃないか。
「余計な話はいい。本題に入ろう。」
そう促して、ビルシュの話を聞くことにした。
この男はいい加減ではあるが、年齢相応に知見や顔は異常なほど広い。何か重要な情報を持っている気がした。
「南部の騒乱の件だ。ちょっと厄介な情報が入ったんだ。」
今までになく深刻な表情に変わったビルシュはそう切り出した。




