第4章 朋友 「berserkr①」
シニタに戻った俺はパティに傷の手当てをしてもらいながら、アッシュ達と情報を共有していた。
「そうか、やはりテトリアだったのか。」
「ああ。もう3度目だ。今回も決着をつけられなかった。」
アッシュのつぶやきにそう答えた。
今のままではテトリアを完全に倒す事は難しい。
それに、撃退はできたが余裕のある闘いではなかった。次回も同じような結果となる保証もない。
「それにしても、よく倒せたな。」
「まあな。ギリギリだった。」
テトリアが残していった剣を回収していた。これがあれば今後の闘いが有利になるのではないかと思っていたのだが、予想に反して攻撃を無効化する能力は消えている。
剣そのものが特別なのではなく、テトリアが持つ事で機能する何かの術式がかかっていたのかもしれない。邪神シュテインは神だ。こちらが知らない神威術を使っていたとしても不思議ではなかった。
「どうやったんだ?」
それを聞くな。
自らの股間を人質に使ったなんて言えるはずがないだろう。
「がんばった。」
「···そうか。壮絶な闘いだったんだろうな。」
「そうだな。それよりも、今後について考えなければならない。」
アッシュの好奇心につきあって恥をさらす必要はない。俺はすぐに話をすり替えた。
「魔族の占有地の探索と、南部の騒乱への対処ですね。」
マルガレーテがこちらの誘導に乗ってくれた。これで真面目な話ができる。
「そうだ。それに、この大陸で他の悪魔王の体が残っているか、確認ができればしておきたい。転移ルートと合わせて蒼帝ブラールに話が聞けるとありがたいんだが。」
「それは俺が確認しよう。」
「わかった。アッシュに任せる。」
蒼帝ブラールが情報を持っていれば良いが、可能性は半々だろう。
「転移ルートがわかるまでに魔族の占有地の探索をするというわけね。」
「そうだな。残党がいるかもしれない。それに、そちらは謎が多いから、調査には多少の時間を要するだろう。」
サキナの言葉にそう返したが、王都とシニタにも加護者の戦力は残すべきだろう。
「あの···ひとつよろしいでしょうか。」
大司教だ。
「どうかされましたか?」
「教皇猊下から連絡が入りまして···。」
このタイミングでビルシュから連絡が入ったとなると、近くで潜伏して状況を見ていたのではないかと疑う。
旅に出たというのも、責任を追求されることを回避するための狂言か。
相変わらず、いい加減な聖職者だった。




