第4章 朋友 「The fool again⑱」
処置を終え、深いため息を吐いた。
テトリアはまたどこかで宿体を見つけて向かってくるだろう。
この大陸に他の悪魔王クラスの体が封印されている可能性は十分にあった。
先ほどまで目の前にあったものと同じように、まだ人知れず隠されている可能性は高いといえる。
だが、その前に南部で起きようとしている騒乱を何とかしなければならない。
テトリアの話では悪魔や魔族、もしくは同等の存在がいるとの事だった。
どの程度の規模かはわからないが、放置しておくと周辺国家以外にも犠牲が広まっていくだろう。
しかし、その地域の詳細がわからないのでは転移は使えない。どのようにして移動するかの手段を講じる必要があった。
加えて、アッシュが殲滅した魔族の占有地の詳細探索もしておかなければならない。
あの場に残っている魔族がいないという確証はなく、また長年魔族が居座っていたために謎が多い場所だといえた。
やる事が多過ぎる。
しかし、どれも放置して良い問題ではなかった。優先順位をつけて取り組まなければならない。
そこまで考えた時に轟音が鳴り響き、蒼い火柱のようなものが上がったのが視界に入った。
アッシュ達が魔族の撃退に向かった方角だ。
それを見た瞬間、俺は自分の思考を改めることにした。
エージェント時代の癖で、全部を自分で背負いこもうとしていた事に気づいたのだ。
もちろん、エージェントの活動にはそこまでの行動権限はない。
ある程度の多略善段はエージェントが個々に行うが、任務の進捗過程で内容が展開しすぎた場合は、本部が着地点を協議して担当の細分化や再配分を行う。
しかし、こちらの世界ではその役割がいないのだ。
即ち、俺に牽制やストップをかける者がいないという状況になる。
そして最大の違いは、今は信頼できる仲間がいるという事だった。
1人で取り組むのが難しいなら頼れば良い。
自らの身一つで足りないのであれば、チームを分けて同時進行すれば良い。
どっぷりと浸かった習慣は捨て去り、現状でできる方向性に改めるべきだという結論に至った。
先ほどの蒼炎を見る限り、アッシュ達の方も事が終息したと考えられる。
それならば、今後の事を相談してみようという気持ちになった。
まずは自身が得た情報を整理し、正確な事実と推測によるものを分断しなければならない。
思考を加速させながら、もう一つの戦場へと足を向ける事にした。




