第4章 朋友 「The fool again⑮」
破龍がテトリアの胸に突き刺さった。
場所は胸部中央の右下辺り。
邪気がそこから発動しているのを何度か確認している。
それが奴の核がある場所だという確信だった。
「ふ、くくく···。」
テトリアの嘲笑。
剣がより深く突き刺さるが、それを物ともせずに距離を詰めてくる。同時に俺の体を両腕で挟み込み締めあげてきた。
すぐ傍で、奴の剣が落ちて地面に突き刺さるかすかな物音が聞こえてくる。
「いいね。君のその驚いた表情は。これまでにされてきた事をまとめて返せた気分だよ。」
なぜだ?
核を破壊したつもりだったが、テトリアの様子にダメージを負った気配はない。
「離せ。男に抱きつかれる趣味はない。」
「ふふん。この場に及んで強がりかい?君はこのまま僕を受け入れるしかないんだよ。」
核が複数あるのか?
それとも、体内を動いたりするのだろうか。
「考えているね。悪魔の体は核が弱点なのに、手応えがないって顔だよ。ふふ、いいね。なかなかのご褒美だよ。」
強い力で締めあげられているとはいえ、奴の体との間には俺の腕が入っている。
頭突きで対抗するか、もしくは多少は動かせる左の肘から先で何かを試みるか。
密着しているのでスタンスティックを使うとこちらにも雷撃が走る。いや、魔法である以上は俺の体には通じないか···。
「無駄だよ。君の雷撃はあの魔道具が必要なんだろう?出現させた瞬間に左手を吹き飛ばすよ。」
テトリアはそう言って、背中に回している手で俺の左肩に触れてきた。
破龍は鍔が奴の胸部にあたるくらいまで体内に入り込んでいる。それを持つ俺の右腕も、肘が折り畳まれた状態で圧迫されていた。
となると、選択肢は頭突きしかないが、それで拘束を解けるだけのダメージが与えられるかは疑問だった。こちらへのダメージが大きく、意識を失うようになっては意味がない。
「狙っていたのか?」
「そうだ。いつも君には填められているからね。今度は君に同じ思いをさせてやろうと思っていたのさ。今回は僕がマウントをとらせてもらうよ。」
···全部意味は違うのだが、こいつに抱き締められながら、ハメるとかマウントをとるなどと言われると寒気しか走らなかった。




