第4章 朋友 「The fool again⑭」
テトリアの邪気が膨らんだ。
左手をすっと前に出してくる。
先ほどと同じ攻撃。
掌に黒い稲妻のようなものが集束されるのが見えた。俺は両腕を上にあげて、腰を前に突き出した。
「それが当たれば、おまえが欲しいものは木っ端微塵になるぞ。」
「····················。」
「ほらほら。」
俺はそのまま腰を振りながら前進した。
「く、卑怯だぞ!」
他の者が見れば、これ以上意味のわからない構図はないだろう。
邪気による攻撃を仕掛けようとする悪魔の前で、笑いながら腰を振る男。自分で言うのも何だが、知り合いには見せられない行為だ。
しかし、背に腹は変えられない。
「おまえの強力な攻撃は、アレを一片も残さずに破壊してしまうだろう。どれだけ優れた回復をかけようとも、修復は難しいはずだ。」
俺はさらに振りを大きくしながら、ジリジリと間合いを詰めていく。
「き、君は恥ずかしくないのか!?神聖な闘いにそんなものを人質にするなんて!」
おまえに神聖な闘いとか言われたくないわ。
恥ずかしい?
そんなことに身悶えていたら、勝てるものも勝てないだろうが。
「おまえに体を好きに使われるくらいなら、生き恥を晒した方がマシだ。」
「くそっ!」
テトリアが攻撃を放ってきた。
しかし、足もとを狙っているのが視線や手の角度で把握できる。
前へと進み、一気に加速した。
「何っ!?」
テトリアの攻撃の射線に自ら飛び込んだ。
黒い稲妻がこちらに向かってくる。
直撃する刹那、瞬間移動でテトリアの側面に出た。
左手を奴の体に向けて動かす。
「くっ!」
テトリアは、迎撃ではなく後退を選んだ。
スタンスティックの雷撃を警戒したのだろう。
だが、この動きはフェイントだ。
俺は一歩踏み込んで、破龍をテトリアの頭上に振り下ろした。
ガッ!
奴の剣と破龍が衝突して火花が散る。
そこに左手に顕現させたスタンスティックを、下方から大腿部を狙って振り上げた。
「ぐぁっ!」
雷撃。
そして一瞬動きを止めたテトリアに、破龍を旋回させての横薙ぎ。
わずかだが竜孔流を流し込む。
「ちぃぃぃ。」
倒れ込むように避けたテトリアの右腕を浅く斬り裂いた。
すぐにスタンスティックからHGー01にスイッチして引き金を絞る。
ドッパァーン!
ドッパァーン!
銃弾にも竜孔流を纏わせていたが、地面を転がって回避された。
こちらの想定通りに動いた事で、テトリアにわずかな隙ができる。その隙を無駄にせず、胸部へ破龍をたたき込んだ。




