第4章 朋友 「The fool again⑬」
HGー01から再び破龍にスイッチした。
蒼龍で一気にケリをつけたい所だが、今の状況では悪手でしかない。
蒼龍の斬撃に竜孔流を乗せれば奴を両断できるかもしれない。しかし、蒼龍の損傷するリスクが高過ぎた。
テトリアが躊躇して動きを鈍くするのは、あくまで攻撃の際でしかない。
身体能力で勝り、剣技でも相当な腕前を持っているのだ。素直に刃が通るとは思わない方が良いだろう。
テトリアが剣を一閃した。
離れた位置からの剣風による攻撃。
軌道を見切り避ける。
そこを隙と捉えて追撃してきた。
破龍で剣筋をそらせて回避する。
角度をつけて打ち合わせたにも関わらず、腕への衝撃は大きい。
人格的に破綻していようが、やはりこの男は強い。
「うらぁっ!」
テトリアが吠えた。
体から急激な圧を感じる。
連撃。
剣が交わるごとに加速する様子から、身体能力強化を使ったと思えた。
「うらうらうらうらうらーっ!」
攻め急いでいるように見えて大振りはしてこない。コンパクトな最速の軌道による回転で俺に襲いかかってくる。
辛うじて回避できているが、何箇所かの皮膚が裂け出血している。
破龍を持つ利き腕が度重なる衝撃で悲鳴をあげていた。
「うらーっ!」
ガィーン!
打ち当てられた奴の剣撃で破龍がわずかに弾かれる。
ニタっとした笑みをこぼしたテトリアが、刺突に切り替えて俺の胸に剣を抉り込もうとしてきた。
間一髪で体を逸らせて致命傷は免れるが、脇腹が大きく裂かれた。
そのまま剣の柄に両手を添えたテトリアは、横なぎに俺を斬りつけてくる。
カッ!
「ぐぉぉぉぉぉぉぉーっ!?」
突然の雷撃にテトリアの動きが止まった。
左手にスタンスティックを顕現させて、テトリアの手首付近に当てたのだ。
すぐに後ろへ跳び、間合いを空ける。
打ち合ったのはほんのわずがな時間だが、息が乱れていた。
呼吸を整え、肺から空気を絞り出す。
竜孔の発動には呼吸の乱れが悪影響を及ぼす。この辺りは気功と似たような側面があった。
「くぅ···君は魔法は使えないんじゃなかったのか!?」
奴の手首に当てた後、スタンスティックはすぐに収納していた。こういった闘いでは奥の手はできるだけ明かさない方が良い。
何かの武具を介した攻撃である事は気づいているだろう。しかし、この世界では攻撃に使える魔道具は少ない。テトリアにしてみれば、またもや未知の武器を使われたという意識が広がっているのかも知れなかった。




