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126話 大切な居場所⑱

「ひ···ひいぃぃぃぃー···ほ、本物っ!」


地売屋が青い顔···それによだれと鼻水を撒き散らしながら超高速の後退りをしだした。当然、狭い店内ではそうそう逃げ場はない。


「こ···殺される···。」


あげくは失禁までする始末···他の女性店員達は一ヶ所に固まってこちらの様子をうかがっているが、怖がっているというよりもどちらかと言えば嬉しそうな目線をしている。


「あれがギルマス補佐様···。」


「はぁ~、思ったよりも細マッチョ系···良いわぁ···。」


何この人たち···。

とりあえず無視しておこう。


俺は男に話しかけた。


「殺しはしない。だが簡単には許さないぞ。お前は悪質な営業をした上に、ギルドと俺の名誉を著しく傷つけようとした。死ぬよりも辛い目に合わせてやらないとな。」


「··············。」


震えて涙目になる男。

そんな顔をしてもかわいくないぞ。むしろそんなに怯えるなら最初から人の名前を使うなよな。




男は地売屋の経営者だった。

とりあえず漏らすものを漏らしたので臭いし汚い。


俺は決裁権を含む全ての権利に関する譲渡書と、ギルドと俺の名前を騙った詐欺行為についての告白文を男に書かせた。

次いで、女性店員4名を呼び、譲受人欄に署名と拇印を押してもらう。これでここにいる全員が証人及び直接的な関与人となるから後で文句は言えないだろう。


こちらの世界でも司法裁判は存在する。

多少脅しを入れた感はあるが、告白文が直筆で自署のサインもあるので証拠的効力は大きい···と図書館の本にも書いてあった。


科学的な捜査がない分、旧態依然とした証拠が有効なのだろう。


あとはこの地売屋が所有する全不動産の取得経緯及び取得額をリスト化させた。もともとの帳簿があったので時間はそれほどかからずに完成する。


こういった手法は、エージェントとして粛清対象の企業を乗っ取ったり、個人を社会的に破滅させる時によく使った。こちらの法については元の世界と似通ったものが多いが、書類関連が簡素なのでそれほどの労力はかからない。


図書館の本にある知識は本当に素晴らしい。


経営者の男は涙で顔をぐしゃぐしゃにしていたが、完全に諦めたようで躊躇いもせずに書類を作成していった。


完成したリストを見ると、不正とも言える悪質な手段で手に入れたものが5件もあった。

中には今月中の立ち退きを強要している孤児院まである始末だ。


俺は軽蔑の眼差しで男を眺めながら確認をした。


「他にも同じような物件を隠していないよな?もしあるのがバレたらその時点で即人生が終わると思えよ。」


「あ、ありません!死にたくはないです!!嘘なんか言いませんっ!!!」


とりあえず信じることにした。


過去に遡って同様のケースをリカバーするのはさすがに厳しかった。

せめて間に合うものだけでも救済をしておこう。


「購入した価格に3割を上乗せした金額で俺がすべての物件を買う。出た利益はそこの女性達を含めた5人で均等に分配しろ。」


「そんな···均等だなんて···。」


「退職金と迷惑料を支払うと思え。俺が購入した不正入手物件はすべてを元の持ち主に返す。訴えたかったら好きにしていいぞ。」


訴えられるはずがなかった。


地上げ行為は慣習として罪には問われないのかも知れない。だが、ギルドやその要職の名を無断使用して行った商売については完全な違法行為だ。


俺は金銭と権利書を引き換えに売買契約を交わし、今後もこの街で商売を続けるつもりなら、まともな商行為を行うように誓約書を書かせた。






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