第4章 朋友 「The fool again⑫」
膝蹴りでのけぞったテトリアが、俺の襟元を掴もうとしてきた。
咄嗟にその手首を掴み、自らの体重をテトリアに預けるようにして一緒に倒れ込む。
地面に接するまでの刹那、HGー01の銃身でテトリアの顎先を殴りつける。竜孔流を注ぐ時間はなかったが、脳を多少揺らすことはできただろう。
この至近距離で発砲すると、奴の障壁で弾かれた弾丸が跳弾となる恐れがあった。さすがに自ら発射した銃弾で負傷する訳にはいかない。
完全に倒れる前に、テトリアの腹部を蹴って間合いを取る。
ドッパァーン!
ドッパァーン!
離れ際に発砲するも、それは障壁によって防がれてしまい追加で衝撃を与えるだけに留まった。
先ほどよりも有利な流れとはいえ、やはり致命打が狙えない。
「かっ、ぐぅぉぉぉぉーっ!」
テトリアが凄まじい形相で立ち上がった。
多少ふらついているが、思った以上にタフな体をしているようだ。
剣を振りかぶり、真っ直ぐに向かってきた。
相当な怒気が滲み出している。
思うように闘えないジレンマと、強者である自負がプライドを大きく傷つけたのだろう。
「死ねっ!」
速い。
しかし、大振りな上段からの振り下ろしだ。
HGー01で応射する時間はなかった。スライディングの要領で間合いを詰め、テトリアの足を両足で挟みこみ捻る。
バランスを崩したテトリアは、それでも剣先を突き出そうとしてきた。
すぐに両足を解除し、横に転がりながら離脱する。
共に腹筋を使って立ち上がり、再び対峙した。
厳しい闘いである。
竜孔流を奴の体に放つには、直接触れるか剣撃に乗せるしかない。
しかし、その為にはどうしてもあの剣が邪魔になる。
今のテトリアは、一撃のもとに俺を無力化することを狙っているだろう。
俺に余力を残すと、奴が欲しているものが自らの手によって絶たれると理解しているようだ。
俺にとっても必死だ。
仮に奴を倒せたとしても、自分自身を去勢するような真似はできればしたくない。
双方に、これ以上ない緊張感が漂っていた。




