第4章 朋友 「The fool again⑪」
「させない!」
俺が破龍の切っ先を自分の股間に向けた瞬間に、テトリアが一気に間合いを詰めてきた。
形相が必死すぎてドン引きしそうになる。自らの股間を人質にとるという訳の分からない戦略が効果的だったようだ。
俺に急迫してくるテトリアに対して笑みを見せながら、俺は自分の股間に向けて破龍を突き刺した。
「!?」
刺突の構えで向かってきながらも、俺の行動に驚きを見せたテトリアの動きが鈍る。
俺はギリギリの所で狙いを逸らせて破龍を地面に突き刺す。それを支柱代わりに両足の屈伸を使って背面から体を捻り、前方に宙返りを打った。
中途半端な動きで体勢を崩したテトリアの頭部に両足を巻き付け、下半身の力と旋回の勢いで投げ飛ばす。
プロレス技でいうヘッドシザーズ・ホイップ。
テトリアを頭から地面に叩きつけた。
すぐに間合いを取り、破龍からHGー01に持ち替えた俺は余裕を持って残弾の補充を行う。
「く、くそっ!また卑劣な手を。」
立ち上がったテトリアが恨みがましくそう言った。
「卑劣?俺は自分の体を犠牲にしてでもおまえを倒す。ただ、それだけだ。」
「できる訳がない!君は男としての一生を台無しにするつもりか!?」
「おまえに体を乗っ取られたら、それどころじゃないだろう?」
「く、わかった!君の体を乗っ取っても、良い場面を見られるように意識の一部は残そう。」
いらんわ!
というか、そんな器用な事ができるのか?
「遠慮しておこう。他人のそんな行為を見たくはない。」
「ぐ···。」
項垂れるような仕草をしているが、こいつは煩悩で突き動かされている。油断をする気はなかった。煩悩はいつでも限界突破をするものだ。
「絶対にその体はもらう!」
テトリアの瞬間移動。
ドッパァーン!
俺は自分の股間に向けてHGー01を発射した。
「!?」
背後に回ったテトリアが一瞬動きを止める。
俺は奴の顔面に肘を見舞った。
「ぐはっ!?」
障壁を破った肘が顔面にヒットする。
奴の障壁はやはり魔力で形成されているのか、今の一撃に抵抗は感じられなかった。
続け様にHGー01をテトリアの足に向けて発射する。
左足の脛が被弾するが、そちらは障壁で弾かれたようだ。しかし、着弾の衝撃でつんのめったテトリアが顔面を下げたのを見て膝を入れる。
「ぐほっ!?」
クリーンヒットした。
致命打には至らないが、ようやく奴を倒す糸口を見つけた気がした。




