第4章 朋友 「The fool again③」
スラッグ弾で既に体のバランスを崩していた奴の頭部にHGー01から吐き出された弾丸が集中する。
首から上の障壁に着弾した弾丸は、そのまま角度を変えて後方へと流れていく。
平らなものではなく、斜めに角度をつけた障壁が展開されていると感じた。
防御に用いる壁や盾は、高い強度であるほど後ろに衝撃を通しやすい。奴の頭部周りにある障壁は、三角形の頂点がこちらに向くような形状をしているのだろう。
弾丸は角度のある障壁に当たるとそこで軌道を逸らしてしまう。その物理的な法則が上手く利用されていた。わずかな時間で対策をしてくるのは、奴の戦闘センスの高さに他ならない。
狙いを修正して、腹部や胸部に銃弾を集中させる。
そちらも同様の挙動であることが確認できた。直接的な被弾は避けられても、衝撃が通る事に対して完全なる対策をしてきたと考えるべきだろう。
俺は駆け出して別の角度から銃撃を放った。
こちらの動きに合わせて体の角度を変えてくる。
手榴弾を投げる。
先ほどの閃光手榴弾が布石となり、奴は回避ではなく目を閉ざす行動に出た。
ドォーン!
手前で炸裂した手榴弾の爆風を浴びて吹っ飛んだ奴を尻目に、HGー01をスピードローダーを使い再装填する。
2丁の装填が完了したタイミングで奴が立ち上がってきた。爆風をまともに受けたはずだが、ダメージはほとんどないようだ。
またもやニタァと笑う奴に照準を合わせる。
今度は2丁拳銃による連射ではなく、利腕である右からの正確射撃を行う。
ドッパァーン!
ガッ!
頭部の障壁に直撃した弾丸は、スラッグ弾と同じような末路をたどった。
左右に角度をつけた障壁で弾丸の軌道を逸らすのであれば、その合わさる三角形の頂点を狙えば良い。
弾丸は潰れて前方に弾かれたが、その衝撃は殺しきれずに奴の頭部を襲う。
状態を大きくのけ反らせて後ろ足を踏んだ奴は、すぐに体勢を戻せなかった。脳への衝撃でふらついたのだ。
竜孔を発動させ、竜孔流をHGー01に送り込む。
ドッパァーン!
この1発は奴の障壁を破壊するはずだ。
対悪魔用にストッピングパワーを求めて作ったHGー01。それを防ぐほど堅牢な障壁には驚いたが、竜孔流との組み合わせは防げないだろう。
そう思い、次弾を発射する。
ガッキィーン!
1発目が障壁を破壊。続く2発目が頭部に被弾すると思ったのだが···
ギィーン!
奴の手に現れた剣が、その弾丸を弾くのを目の当たりにすることとなった。




