125話 大切な居場所⑰
「ギルマス補佐がスレイヤーを客として斡旋してくれるって?」
「だからそう言ってるだろ。その費用も入ってるから高いんだよ。あとの商売が成功したようなもんだから先行投資というやつさ。」
勝手に俺を商売に使うなよ。
「そのギルマス補佐は知り合いなのか?」
「ああ。昔からのな。」
さて、どうしてやろうか。
この嘘つき野郎。
「契約前に会わせてもらえるのか?」
「忙しくしてるから無理だ。契約後なら頼んでやっても良いがな。」
「···ちなみにギルマス補佐にはいくら支払うんだ?」
男は眉間にシワを寄せて小さな声で答えた。
「販売価格の6割だ。」
なかなかの大金だ。
これってバレたら職権濫用と収賄罪になるだろう。もちろん冤罪だが。
「そのギルマス補佐ってのはそんなに力があるのか?」
「なんだよ、知らねえのか?魔族を素手で倒した上に、国一番のスレイヤーであるギルマスを模擬戦で負かしたらしいぜ。言うことを聞かねえ奴なんかいねぇさ。スレイヤーの中じゃ、化物って言われてるらしいしな。」
なんだろう。
なぜかすごく悲しくなってきた。
俺は恐怖の対象なのか?
「何だよ、黙りこくって。こんなに良い物件は他にないぜ。」
「···そのギルマス補佐ってどんな外観をしてるんだ?」
「···············。」
「髪は何色だ?」
「·····疑ってるのか?」
男の声には怒気が含まれていた。都合が悪くなるとコワモテで通すつもりか。
コイツは俺のことを見たこともないんだろう。この辺りでは黒髪は珍しい。知っていれば、俺の外観を見て気づいたはずだ。
「疑ってなんかいないさ。」
「だったら金が足りないのか?」
表情がさらに険しくなった。
そろそろ潮時だろう。
「ギルマス補佐には何も支払わなくていい。その分を引いた額で買う。」
男は一瞬フリーズし、その後すぐに復活して怒鳴りだす。
「はあ!?てめえ、何をほざいてやがる!!」
店内にいた女性達は男の剣幕よりも平然としている俺に興味津々といった感じだ。この厳つい男がこういった態度に出るのには慣れているのだろう。
「本人がそれで良いと言ってる。そもそも俺はお前なんか知らないがな。」
「は?」
俺は身分証とスレイヤー認定証を目に見える位置にかざした。
水戸黄門の気分だ。
「···なっ···ギルマス補佐···それにランク···S··嘘···。」
男の顔から表情が抜け落ちた。
口と鼻から何かが出てきている。
汚い。
「さてと、人を勝手に利用した奴はどうなると思う?」
俺は拳を鳴らし、口角を吊り上げて笑ってやった。




