第4章 朋友 「The fool again①」
AMRー01から発射されたフルメタルジャケット弾が真っ直ぐに対象に迫る。
避けられるか弾かれる可能性が高いと思いながら結果を見守った。
「!?」
魔法障壁の展開もせず、高速で突っ切った弾丸を、あろう事か奴が右手で摘み取った。こちらに視線を転じていたとはいえ、非常識な末路を見せてくれる。
スコープ越しの奴の顔がニタッとした粘着質な笑いを浮かべていた。
すぐに次の挙動に移った事を感じた俺は前方に向かって走りだす。一瞬後に、先ほどまでいた場所の地面が弾けた。
指で摘んだ弾丸を投げつけてきたのだ。
これまでとは異なり、動体視力も身体能力も格段上の相手だと判断した。
上空にいる的に対抗するにも、盲射では牽制にしかならない。照準を定めるにしても、その隙を狙われるリスクは負えなかった。
ソート・ジャッジメントの反応を考えれば、奴は魔族ではなく悪魔側の存在だろう。邪気の深さが圧倒的だといえる。
相手が悪魔なら、その攻撃は魔法だけとは限らない。今までとは違い、魔法が効かないからと無防備に対応するのは避けた方が無難だろう。
この状況は、こちら側にとって不利な要素しかない。
AMRー01の攻撃がああも簡単に防がれるなら、俺は上空からの格好の的となる。牽制にもならない銃撃などやるだけ無駄だ。
転移して奴の背後を取ろうかとも考えたが、こちらの動きを鋭敏に察知する可能性は高かった。現れた瞬間に狙われれば、飛行できない俺は再度転移で逃げるしか選択肢がない。
さて、どうするかと考えた矢先に、奴はゆっくりと降下を始めた。
こちらを注視しているところを見ると警戒はしているのだろう。攻撃を無効化できるのではなく、回避するのが前提であるからだとも思える。
虚をつけば倒すことは可能だろうか。
AMRー01を収納して、視線を逸らさずに奴が降り立つのを待った。
強いというよりも厄介な相手だった。
おそらく奴は、こちらの手の内を知っている。遠距離からの攻撃を待っていたと考える方が自然かもしれない。かつての戦いで奴が後手に回ったのは、そのほとんどが未知である銃火器類からの攻撃によるものだった。
今の肉体や能力を把握する意味で、狙撃への対応力を試したのではないかと思った。
今も、俺から視線を外すことなくじっと注視している。
倒せない相手ではないだろう。ただ、集中力を切らした時点で手痛い攻撃を受けると考えた方が良い。
奴の目から視線を逸らさずに、距離が詰まるに従ってこちらも足の動きを速めた。
野放しにはできない相手である。ここで叩いておくしかないだろう。




