第4章 朋友 「Intension⑰」
シニタ中立領全体が結界に覆われた。
特別な力がない者でも、燐光によるシルエットが目視で確認できる。
「成功しました。これを維持します。」
わずかに息を乱れさせ、薄らと汗ばんだ顔でクレアが微笑んだ。
「ありがとう。できるだけ短い時間で終わらせるから耐えてくれ。」
「大丈夫です。タイガさんこそ、お気をつけて。」
クレアの言葉に頷き、踵を返した。
魔族が向かってくるであろう方角を見つめる。
防衛に配慮された城塞都市とは異なり、アトレイク教の本部があるシニタは開かれた造りをしている。率直にいえば、敵からの侵攻に対して無防備な状態といえた。
「どうする。分散されたら厳しいぞ。」
アッシュが言うように、数で展開されたら厳しい戦いになるだろう。しかし、そのための結界でもある。
「これまでと同じパターンで潰せるなら問題はないんだがな。今回は統率された動きで来るかもしれない。」
「打ち合わせ通りの布陣としてアッシュ様が正面に、他の3人がその左右と後方支援に別れて迎え撃つという形がベストかと思われます。タイガ様は遊撃に徹してください。」
マルガレーテが事前に決めた陣容を反芻した。やはりそれが最適かと思われる。
遠距離攻撃に特化した魔法士がいる訳ではないが、そこはサキナがイーグルアイを使って代替りできるだろう。
WCFTー01の魔石に関しては補充が間に合っていない。王城で調達しようと考えていたが、適切な魔石のストックがなかったからだ。
「わかった、それでいこう。想定している奴がいるなら、誘い出して単独で撃破する。」
「その想定している奴っていうのは、あんたが話していた男で間違いないのか?」
ファフは奴を直接目にしたことがない。それはマルガレーテも同じではあるが、彼女はあまり推測で物事を考えない合理主義者なので大した疑問は持っていないようだ。
「あくまで予想に過ぎないが、それ以外の存在が思いつかない。未知の敵という可能性もある。その場合も基本行動は同じでいこう。」
もしかすると、これまでの戦いよりも苦戦するかもしれない。
魔族だけならそれほどの脅威ではない。しかし今回は集団を掌握している存在がいるかもしれないのだ。
戦力的な問題よりも、戦術では数がものを言うことがある。
奴に卓越した指揮能力があるとは思えないが、油断はしない方が良いだろう。




