第4章 朋友 「Intension⑮」
「こちらに向かっている魔族に、悪魔が紛れている可能性が濃厚ということか。」
それぞれに動いてくれていた加護者に集まってもらい、わかっている内容を伝えた。
「そうだ。しかも、悪魔王の力を奪った奴の可能性がある。」
「ほう、そいつは楽しみだ。」
アッシュが不謹慎な発言をするが、自信の現れともいえるだろう。いちいちツッコミを入れるのはやめておくことにした。
「俺と因縁のある相手かもしれない。」
「悪魔がか?」
「そうだ。」
まだ推測にしか過ぎない。しかし、それが間違っていなければ厄介な相手になる。
「こちらの大陸では悪魔は確認されていないと聞いていたが、まさか向こうの?」
そう発言したのはファフだ。
前にいた大陸で討ち漏らした悪魔が、何らかの手段でこちらに渡ってきたのかと思い至ったのかもしれない。
「ベースとなっている個体が悪魔ならそうかもしれない。しかし、奴等が大陸間を転移できるなら、これまでにその脅威がなかったのが不自然だ。推測にしか過ぎないが、少し違う気もする。」
「どういうことだ?」
ファフを始め、俺の発言に対してみんなが疑問を感じるのは当然だろう。
「まだはっきりとしたことは言えない。可能性は感じるが、確証がないんだ。下手に考えて動きに支障が出るのは避けたい。とりあえず、その個体が現れたら俺が対処する。みんなには他の魔族を相手にしてもらいたい。」
「もしかして、奴か?」
真っ先に勘を働かせたのはアッシュだった。こういったことへの嗅覚はやはり鋭い。
「たぶんな。」
「わかった。そいつはおまえに任せる。」
アッシュがそう言った事で、他の者も理解を示してくれた。
俺の言っている奴の事を具体的に理解した者は少ないだろう。しかし、常に戦いに先陣をきろうとするアッシュが引き下がったのだ。何かあるということはみんなが気づいていたようだ。
推測が正しかった場合、その対処は面倒でしかない。それに、簡単にはいかない相手だともいえる。
その可能性と聖女クレアの広範囲結界も踏まえた上で、防衛体制を修正することにした。
最悪の相手が現れた場合と結界の展開。
その2点をポイントとして複数のパターンを想定して作戦を考え、それぞれのターニングポイントを設けていく。
こういった事案は常に突発的な事態に陥る可能性があるため、ある程度の筋道は作っても都度臨機応変に対処ができるようにしておく必要があった。
特に避難誘導と広範囲結界に関しては、その成否が犠牲に直結する。
王都とは異なり、斥候や監視役を派遣できるような余剰戦力がないため、現実的に対応できる作戦はそれほど多くはないといえた。




