第4章 朋友 「Intension⑬」
「そんなことが···。」
アッシュ達には魔族を迎撃するための布陣について話し合いを開始してもらっていた。
サキナやマルガレーテもシニタの民衆への声がけを騎士達に指示し、いつでも避難できる体制へと急ピッチで進めてくれている。教会の聖騎士達もそちらに協力してもらっていた。
俺はクレアやクリスティーヌ、そして大司教に対して腰を据えてこれまでのあらましを語っていた。
「こちらに向かっている魔族には悪魔が紛れている可能性がある。そいつが宝珠の欠片を狙って動いていると考えるのが妥当だと思える。シニタに被害が出ないように撃退するつもりだ。」
叙爵式以降の経緯を聞いた3人は、驚きよりも悲しい顔をしていた。
「タイガさんは、そういう人でしたね。身を危険に晒しても、他の人を守ろうと全力を尽くして···本当に恥ずかしいです。私は···あなたのために何の力にも···。」
クレアは泣いていた。
傍にいるクリスティーヌも同じだ。
「聖女様は、タイガ様を誤解している人々を説こうと必死でした。しかし、それに注力すればするほど、教会内部には不穏な声が目立つようになりました。力が及ばず、そういった者達を抑えられなかった責は私にこそあるといえるでしょう。本当に申し訳ありません。」
大司教も自身の気持ちを吐露した。
「別に誰かに認めて欲しくて動いている訳じゃない。誤解や非難を浴びようと、俺は自分の信念に基づいて行動している。だから、あなた方だけでも信じてもらえているなら嬉しい限りだ。」
「あなたの信念とは、天命だと解釈してもよろしいですか?」
聖職者らしい言い方だと思えた。しかし、俺の行動は天命などとは趣きの異なるものだといえる。
「むしろ、懺悔に近いのかもしれない。この世界に来る前は、職業的に似たような事を生業としていた。ただ、そこに自分の意思はなかったと思っている。与えられた任務を淡々とこなすような、単純作業を繰り返していたようなものだ。」
「「「························。」」」
神的な何かに祭り上げられたいとは思っていない。
英雄願望もない。
ただ、俺に束の間でも平穏をもたらせてくれた人々に報いたい。
救える状況なら、何かの制限を受けることなく自分の意思で動きたい。
そこに高尚な意志の介入があろうがなかろうが、それは俺にとってどうでも良いことだといえた。




