第4章 朋友 「Intension⑪」
聖属性魔法士が揃った所で次の行動へと移った。
「俺が扉を開けるタイミングで、部屋を外側から覆う結界を張ってくれ。」
聖女クレアも結界陣を発動する1人として参加するようだ。複層に展開される結界の最終防衛ラインとして、クレアの力が要となる。
竜孔を発動し、全身に竜孔流を巡らせる。
俺自身への結界代わりという側面と、宝珠の欠片を破壊するための布石だ。
「行くぞ。」
扉を開錠して開けると同時に、部屋に施された結界が破れた。
すぐに背後で新たな結界が構築されるのを感じながら、部屋へと踏み込んだ。
黒い小さな魔石のような物が嵌め込まれた宝飾品の欠片。それが部屋の中央にある台座に置かれている。
凝縮された深い闇が魔石の中にあり、それが漏れ出しているとでも形容すればいいのだろうか。結界が一時的に破れた事により、あたかも闇が触手を広げているかの印象を受ける。
竜孔流を体外へと展開して、空間に広がろうとする闇を抑え込む。
すぐに反発してくるが、宝珠の欠片が小さいだけにそこに封じ込まれている力はそれほど強いものではなかった。
『何者か?』
空気に伝導して囁きのような声が聞こえてくる。
気にせずに宝珠の欠片を覆うように竜孔流を纏わせた。
『我を滅しようというのか・・・』
「お前が誰かは知らん。人間に厄災を振り撒く者は淘汰する。」
グルルの古い記憶にある手順をなぞって力を強めていく。
『人間···か。しばらく見ぬ内に脅威となったか。』
まるで諦めたかのような自虐的な響きに興味を抱いた。
「逆だろう。お前たちの力が脅威そのものだ。」
『ふん、その脅威たる力を得ようと動く奴もいる。それこそが脅威といって何がおかしい。』
「···お前の力を得ようとしたのは人間なのか?」
嫌な話を聞いてしまった。
魔人化の次は、悪魔化を狙う人間がいるとでもいうのだろうか。
『あれは既に人の領域ではないがな。しかし、思考は浅ましい人間そのものだった。』
「人の領域ではないだと?」
『かつては人間だった者の慣れの果てと言っていいだろう。自らを稀代の英雄だとか名乗っておったわ。』
「それは、相手が精神体だったと解釈して良いのか?」
心当たりがあった。むしろ、そんなことをしそうなのは奴しかいない。
『そうだ。我の意識を宝珠の一部に隔離し、力そのものだけを奪っていきよった。』
「そいつがこちらに向かって来ているようだが、理由を知っているのか?」
実際はどうかわからないが、揺さぶりをかけてみる。
『そうか。力だけを得ても、使い方がわからなければ制御しきれね。それを今頃になって気づいて、焦っておるのだろう。』
「そいつが意識ごと取り込もうとしていると?」
『おそらくはそうだろうな。』
「わかった。お前の名前は何という?」
『我は誇り高き悪魔王。下賎の者に真名を名乗るとでも思うか。』
「そうか。」
俺は竜孔流を一気に強め、宝珠の欠片ごとその意識を打ち砕いた。
どうやら、一番めんどくさい奴がまた嫌な力を得たようだった。




