124話 大切な居場所⑯
奥の事務室から厳つい男が出てきた。
もしかして···と思っていたら案の定だ。俺の前に座って話し出した。
「ギルド周辺の店舗物件を探してるんだよな?この3件しかないぞ。」
そう言って物件情報が書かれた紙を机に置いてきた。
「あんた誰だ?」
「えっ!ああ、担当を変わったんだよ。」
名前すら名乗らずに横柄な物言いをするコイツにイラっとしたが、いちいち気にするのもどうかと思ったので物件情報を見ることにした。
それぞれに販売価格と賃料の両方が載っている。先ほど見てきた物件だけ異常に高い。
「この物件だけ他の3倍くらいの値がついてるのはなぜかな?」
他の2件も面積はそれほど変わらない。立地がギルドから100メートル前後離れてはいるが、普通に考えたら相場というものがあるのに、それを無視した価格としか思えない。
「ああ、それはギルドのすぐ近くだから当然だろ。」
なるほど、と思った。
俺は「ギルド周辺の店舗物件情報が欲しい」とドロシーに言った。その要望に対して一番条件が良い物件の価格設定を大幅につり上ることで他の2件にお買い得感を演出するというあこぎな商法だ。おそらく全部の物件が割増した価格となっているんだろう。
元の世界ではこういった商法を禁止するために宅地建物取引業法などの法律があるが、こちらではないのかもしれない。
「この3件はすべてここの所有なのかな?」
「当然だ。地売屋なんだから。」
仲介ではなく販売というわけだ。
仲介は専門家である不動産業者が売主と買主の間に入って値づけや販売、各種手続きを行い、所定の仲介手数料を得る。土地の仕入れが要らない分、物件情報を多く持ち数を売って稼ぐ。対して、販売は土地を自分のところで仕入れる必要があるために元手が必要だが、売れば利益は高い。ハイリスクハイリターンというやつだ。
地売屋と言うのはすべて後者なのだろう。この世界ではそれが常識なのかもしれないが、こういった慣習では土地を安く仕入れるために悪質な地上げが常習化する。
今度、チェンバレン大公にこの慣習を改め、適正な取引きがされるための法の制定を進言してみるか。
そんなことを考えていると地売屋の男が驚きの言葉を告げてきた。
「ギルド近くに店を構えるってんだから武器や防具屋、それか飲食店を考えてるんだろう?この一番高い物件はオススメだぞ。何せ、新しいギルマス補佐がスレイヤーを斡旋してくれるからな。その分高くても元が取れる。」
新しいギルマス補佐···って、俺じゃねぇか。
おいおいやってくれるな、この野郎。




