第4章 朋友 「Intension⑤」
シニタ近くに転移した。
外から見ただけでは、以前に来た時と何ら変わらない。
しかし、魔族の襲撃に関しては、既に教会本部と駐留している各国の大使に伝えられているらしい。
「緊急措置として殲滅部隊を送る」とだけ、王国の大使であるバリエ卿には伝えてあるそうだ。バリエ卿は聡い。誰が行くかは詳細を伏せているそうだが、「必ず間に合う」と言われた事で「例の彼が戻って来たのか?」と尋ね返したそうだ。
「このまま教会本部に行くのか?」
「いや、まずは合同庁舎に向かう。大使のバリエ卿を介して、各国の戦力を動かしてもらった方が良いだろう。」
「中立領はそれほど守りが堅固ではないから、民をどこかに避難させるつもりね。」
アッシュの問いからの流れでサキナが後を継いだ。
「そうだな。サキナとマルガレーテで、緊急配備の指揮をやってくれないか?」
このメンバーで都市の防衛戦術に長けているのは、軍や部隊の指揮経験があるサキナかマルガレーテだろう。それに、テスラ王国の騎士達なら、サキナの指揮下に入ることに不平は漏らさないはずだ。
ここに詰めている各国の騎士達はそれほど多くない。2人で手分けしてもらえれば、難しくは···そう思ったのだが···。
「これはどちらが指揮能力に長けているか、見せてみろということですね。」
「あら、駐留している3分の1は我が国の騎士よ。どのくらいのハンデをあげれば良いのかしら?」
なぜこの2人はいがみ合う。
指揮官としてのプライドを、こんな時にぶつけ合うのはやめて欲しい。
「2人共、遊びじゃないぞ。」
「ええ、タイガ様のご期待以上の結果を出しますから、安心してください。」
「私も負けないわ。タイガ、見ていてね。」
「···························。」
ファフを見た。
絶妙なタイミングで目を逸らされる。
アッシュを見た
腹を抱えて笑っていやがった。
やはり自分で諭すしかないか?何となくだが、火に油を注ぐような気がしないでもない。
「しょうがないなぁ···。」
そう言って、2人の前に歩み寄ったのはパティだった。
「ここにいる聖女様は、お淑やかで可憐な感じなんだよ。」
「知っているけど、それがどうかしたの?」
「聖女様はそういったものだと思うが?」
サキナもマルガレーテも、パティの言葉にキョトンとしていた。
俺にもパティの意図がわからない。
「そういう風に殺伐としていると、聖女様の魅力が際立つとは思わない?」
「「·································。」」
「因みに、聖女様はタイガのことがお気に入りだよ。」
「「!?」」
よくわからないが、サキナとマルガレーテの間にあった刺々しい空気が霧散した。
「ありがとう、パティ。」
こちらに戻ってくるパティにそう言った。
「むぅぅぅ。」
ドスっ!
「ぐっ!?」
パティに鳩尾を殴られてしまった。
なぜ!?




