第4章 朋友 「Intension②」
残弾を確認し、装備を整えながら戦況を見守る。
遠視による状況確認がターナー卿の元に逐次報告されているが、アッシュ達は既に残党の殲滅に入っているようだ。
「魔族が逃走に転じた場合、近隣への影響を最優先で考慮しなければならない。その兆候が見られたら随時報告。逃走方面を正確に把握するように。」
ターナー卿が指示を部下達に送っている。的確な対処だといえるだろう。
「ターナー卿。魔族が逃走した場合、私が個体ごとに撃破に向かいます。動きがあったら情報の共有をお願いします。」
「了解した。負傷箇所に問題はないのか?」
「問題ありません。パティも加護者としての力を有しています。幸い、私にも効力があったのでいつでも出れます。」
傷口は既に何の違和感もない。出血で濡れた衣服がはりつく程度の不快感しかなかった。
それよりも、シニタの事を考えなければならない。
今の状況なら、殲滅までにそれほど時間はかからないと思える。念のために何名かに残ってもらい、可能な限りの戦力で向かう方が良いだろう。
「ターナー卿。特定の魔石が王城にあれば譲っていただきたいのですが。」
WCFTー01に使用する魔石の詳細を伝えた。他の弾薬についてはすぐに尽きることはない。シニタでの一戦のために、一から準備するには時間もなさ過ぎた。
「わかった。ストックがあるか確認しよう。ビューア副隊長、悪いが宮廷魔道士の詰所に行って要請してもらえないか?私の名前を出してくれて良い。緊急時だから、申請は事後で問題ないはずた。」
ビューア副隊長とは、アンジェリカのことだ。
「了解しました。すぐに向かいます。」
アンジェリカは、少し俺を見た後で駆け出した。まだ俺の事を心配しているようだ。
「ありがとうございます。」
「問題ない。むしろ、君には借りを作ってばかりだ。」
「気にしないでください。」
ターナー卿との会話を終えてから、また銃器類の確認に戻った。
「私はここにいても良い?」
「そうだな。パティには、アッシュ達に何かあった時に回復を頼みたい。ここで待機しておいてくれ。」
「うん、わかった。」
その後、逐次上がってくる報告に耳を傾けながら、他の武具の手入れをした。
アッシュだけでなく、サキナやマルガレーテ、ファフは戦慣れしている。戦争らしい戦争への従軍経験というわけではないが、対魔族という面では騎士団よりも遥かに有能といえるだろう。




