第4章 朋友 「加護者⑯」
「魔族が二手に分かれたわ。」
王都の外に出て、イーグルアイで魔族の動向を見ていたサキナから連絡が入った。
傍にいるパティが、通信用の水晶を声が届きやすい位置に近づけてくれる。
「別れた方角と数は?」
「7割くらいは正面から向かって来るみたいだけれど、残りは南側に迂回するようよ。側面から仕掛けて来るかもしれない。」
WCFTー01の魔石は残り少ない。使えても、あと1〜2回といったところだろう。
規模の大きい勢力を抑え撃つ弾幕を張るのは、俺の持つ火力では厳しかった。
「アッシュの広範囲攻撃でどのくらい削れる?」
「そうだな。密集しているなら、正面から来る奴らは半減できるだろう。」
「悪いが、マルガレーテの転移で射程範囲まで飛んで削ってくれないか?」
「ああ、まかせろ。」
「サキナとファフはそれに追従してくれ。マルガレーテは様子を見て離脱できそうなら、後でこちらに合流して欲しい。」
「わかりました。」
少し難しい状況になった。
魔族を殲滅できないことはないだろうが、撃ち漏らすと王都に入られてしまう。その場合に被害が出る可能性が出てきた。
「ターナー卿。申し訳ありませんが、部隊を分けて側面警戒をお願いします。」
「了解した。」
「パティは西側の部隊に合流して支援を頼む。」
「うん、わかった。タイガはどうするの?」
「時間稼ぎと撹乱に行ってくる。」
そう言って、俺は転移した。
少し離れた位置から、迂回行動に出た魔族を注視する。
統率しているリーダー格がいるだろうと考えて、その存在を見極めた。
手振りで指揮している先頭の魔族がそうだろう。上位魔族かもしれない。
俺は閃光特化のスタングレネードを取り出しピンを抜く。すぐに転移して、先頭の魔族の正面に出た。
「!?」
驚いた魔族に向けてスタングレネードを放り投げ、HGー01を両手に構えた。
スタングレネードが爆ぜるタイミングで、目を閉じて引き金を絞り盲射する。
すぐに魔法を放ってきた魔族が何体かいたが、空中にいた俺の体は自然落下してその射線からは外れていく。
強烈な閃光を瞼越しに感じると同時に、すぐ近くを強い魔力が通り抜ける感覚を味わう。
スタングレネードの効果が切れる頃合いを見計らって目を開けた。
上空で目を覆う魔族の集団と、被弾して落下する数体が視界に入ってくる。
背中から落下する体勢のままWCFTー01に持ち替えて、火属性のまま引き金を力強く引き絞った。




