第4章 朋友 「加護者⑭」
不意をついた初撃で魔族達は軽いパニックに陥っていた。
このまま空中戦を挑むのは不利でしかない。
俺はすぐに地上へと転移して、WCFTー01を火属性に切り替えた。空いている左手でHGー01を構えて上空にいる魔族に連射する。
ドパァーン!
ドパァーン!
ドパァーン!
盲射ではなく、しっかりと狙いを定めている。
着弾した何体かの魔族の体が木っ端微塵に弾けた。
混乱で魔法障壁の展開ができていなかったようだ。
こちらに気づいた魔族が何かを叫び、数十体が向かって来た。
こういった所が、対等に戦える相手のいない魔族の実戦経験の拙さだといえる。
何の対応策もなく、猪突猛進で進んでくるのはどう考えても悪手だ。しかし、戦術などを組まなくとも、これまでは対応してこれた事が致命的な欠点となる。
可能な限り魔族達を引きつけてWCFTー01の引き金を絞る。
火炎放射が一直線に伸びて、すぐに青い高熱の炎と化す。突出した魔族の体を炎が包んだタイミングで引き金をさらに絞った。
レーザービームのように細い光線となった炎撃で魔族を薙いだ。
後続も含めて多数の魔族が一瞬で塵と化す。
強力だが、この状態での放射は魔石の消耗が激しく長くは続かない。
まだ距離のある魔族は退避行動に移ったようで、かなりの距離をあけている。
一見すると、初撃と同じくらいの被害は出せたようだ。この辺りで及第点だろう。
このまま攻撃を続けても、数で圧倒されて不利になるのは明白だった。
俺は再度転移し、王都に戻ることにした。
「戻ったか、タイガ殿。」
「先制で100体に及ばない程度の被害は出せました。」
「それは朗報だ。しかし、こちらで問題が生じた。」
ターナー卿の顔には焦りは見えかった。緊急を要する事態ではなさそうだ。
「何がありました?」
「シニタにも魔族の集団が向かっていると連絡が入った。」
盲点といえばそうだった。
シニタはこちらよりも距離がある。なぜ標的にされるかは解せなかった。
「シニタまでの距離は?」
「目撃情報があった場所からだとまだ半日はかかる。だが、あの都市の戦力ではひとたまりもないだろう。」
狙いがはっきりとわからないが、対処に動くべきだろう。
シニタは中立都市だが、人口も多く周辺国家にとっても重要な拠点に違いない。
「敵の規模はわかりますか?」
「正確かはわからないが、100には満たないと思う。」
こちらの戦力をあまり割く訳にはいかないだろう。
「アッシュ達をこちらに呼んでもらえますか?」
「わかった。」
俺が行くにしても連絡要員は必要だ。となると、あと1人くらいは連れて行くしかなかった。




