第4章 朋友 「加護者⑪」
王都のすぐ近くまで転移した。
出発間際までの情報収集により、別の場所でも魔族が目撃されていることを確認できていた。
これまでの情報からポイントを絞れば、やはり奴等は真っ直ぐに王都へと向かっているようだ。
分散して他の街や村を襲撃する気配は今のところない。
不幸中の幸いともいえるが、別の角度から考えれば全ての戦力を王都に集中させて一気に蹂躙するつもりだといえた。
俺は再びカツラを装着し、マルガレーテの従者を装っている。この混乱に乗じての余計な諍いは避けたかったのだ。
「連絡をお待ちしておりました。今は王城内で待機しています。国王陛下や大公閣下も同じ部屋におられます。」
ファフがマルガレーテに再度連絡を入れた。
どうやら、短い時間で事の経緯を王城に伝える事に成功したらしい。この辺りは上位貴族であるマルガレーテの立場と、事前にガイウスが大公に連絡をとった事が良い方向に動いたといえる。
メンバーは俺とアッシュ、サキナ、ファフ、パティ。ここにマルガレーテを加えた5名が中心となり魔族に対抗する。
騎士団に関しては防衛に徹してもらうつもりでいる。戦力的にいえば足手まといにしかならないし、万一の場合は重要人物や人民を守る盾になってもらわなければならない。
個人的に、そういった職務に従事ている者は、その責務を全うしなければならないと考えている。初めて王城を訪れた時にスレイヤーを軽視していた面もあるが、一部では今も変わらない姿勢でいるだろう。
無意味に命を捨てる必要はないが、自身の存在意義を意識してもらうには良い機会だ。
「今いるのがどの部屋かはわかるか?」
「私が説明しよう。我々が今いるのは、謁見の間に近い応接室だ。すぐに来られるか?」
チェンバレン大公だ。
事情を聞き、俺達が来るのを待っていたらしい。説明された部屋なら訪れた事もあった。
「すぐに行きます。」
全員でその部屋へと転移した。
「久しいのう。無事で何よりだ。」
「少しお痩せになられたようですね。ご心労をおかけしました。」
以前に顔を合わせた時よりも国王はやつれたようだ。叙爵式以来、国の内外からいろいろと非難を受けたと聞いている。
「かまわぬ。むしろ何もできなかったことを恥じておる。タイガもアッシュも申し訳なかった。」
殊勝なことをいう。
このスタンスが賢王である現れともいえた。
「陛下や閣下のご厚情は理解しています。だからこそ戻って参りました。魔族の殲滅はお任せください。」
「頼む。事態を考えれば、そなたらしか頼れぬ。皆を守ってくれ。」
「御意に。」




