第4章 朋友 「加護者⑧」
「バーンフェニックス!」
ファフが両翼を5mほどまでに広げた紅炎の鳥を解き放った。
前方にいる魔族の集団を一網打尽にして、一度上空へと高々に舞い上がる。
再び魔族に狙いを定めた紅炎の鳥は、魔族の集団の真ん中へと突っ込んでいく。
焼夷弾のように弾けて周囲を豪炎に包んだそれは、その全てを炎の攻撃として魔族を蹂躙する。
···あれが炎帝の力か。
ちょっと怖い。
俺はファフの攻撃でパニックに陥った魔族を、HGー01で確実に倒していった。集団は半ばから分断された形だ。これまでは相対することのなかった戦力差のある相手に愕然としたのか、魔族達の動きは著しく鈍くなっていた。
こういった状況では、力技で攻めずに冷静に数を削らなければならない。好機として無理に突っ込めば、想定外の反撃をくらう可能性があるのだ。死を予感した者の中には、本能的に潜在能力を目覚めさせることがある。
移動しながら魔族の頭部や胸部を穿つ。
HGー01は相手の障壁を物ともせずに、被弾した相手を無残に破滅へと追いやっていく。
再装填のために一度距離を取った。
サキナとファフの攻撃が苛烈なため、分断された向こう側の勢力は既に壊滅に近い状態となっている。
単発の火力だとやはり集団戦では足を引っ張るなと思いつつ、守護者の力には舌を巻く思いだった。
再装填が完了すると、両手をまっすぐに魔族の集団に向けて上げ引き金を絞り続けた。数秒の内に全弾が吐き出され、狙撃対象を貫通して後方にいる魔族も被弾させていく。AMRー01と同じフルメタルジャケット弾だ。悪魔よりも防護の弱い魔族なら、こちらの弾薬の方がより多数にダメージを与えることができる。
蒼龍に持ち替えて間合いを詰めていく。
数が減った魔族に銃器での攻撃を続けると、サキナやファフが射線に入ることを考慮しなければならなくなる。そこに余計な意識を割くくらいなら近接戦闘に切り替えた方が動きやすかった。
まばらになった集団に斬り込み、固体ごとに両断していく。
中には反撃に転じる魔族もいたが、短時間でなす術もなく味方が倒れていく様子を見た結果か、大半が烏合の衆と化していた。
消滅しかかっていたファフの紅炎が、急激な冷気で一気に消え去った。
「タイガ、後は任せて!」
サキナが両手を掲げ、その中心から薔薇のような氷結晶を放つ。
咄嗟に間合いを取り、そのまま集団から離脱した。
元の位置を見ると、サキナの攻撃で切り裂かれた魔族達は凍結し、追撃により細かく破砕されていった。
守護者の力は本当に強力だ。先制のための遠距離攻撃までは良かったが···もしかして、俺は要らない子だったのかもしれない。




