第4章 朋友 「加護者②」
煙の発信源らしき場所が視界に入ってきた。
木々の間を縫いながら斜面を降りていく。全体を見渡せるわけではないが、ちょっとした平原のようになっているのが垣間見えた。
近づくにつれ何十体かの屍の存在が目についたが、そのほとんどが炭化している。
中央辺りの地面が大きく陥没しており、その表面は高熱にさらされたような状態になっていた。
その近くに腰に手を置き、途方に暮れたような姿で佇んでいるアッシュがいた。
表情は見えないが、気を落としているようにも見えた。
「兄さん···。」
フェリの言葉に反応したアッシュは、こちらに顔を向ける。俺の顔に視線を止めた後にニカッと笑った。
「なんだ、元気そうだな。」
「まあな。」
「加護者っていうのは不思議なものだな。同じ立場の人間が知覚できる。それに、欲していた力がこれほどまで身につくとは···ある意味で、人の身を外れた気分にもなる。」
「後悔しているのか?」
「加護を受けた事ならそうでもない。もっと強い相手と闘えるのなら力はあった方が良い。ただ、以前なら死を賭して闘わなければならなかった相手が、こうも簡単に攻略できるのはちょっとな。」
アッシュの視線の先には、1体の魔族の姿があった。
袈裟斬りに両断され、既に息絶えているようだ。
以前のレイドで見かけた上位魔族・・・グレイドと名乗っていたやつかもしれない。
アッシュにとっては、超えなければならない存在だったのだろう。再戦したら呆気なく決着がつき、拍子抜けしているといった感じか。
「まだ面倒な奴らが相当数いる。強さでいえば魔族は前菜のようなものだ。」
俺の言葉にアッシュが顔を綻ばせた。
「そうか、そうだよな。上位魔族ですら圧倒できるなら、俺の楽しみはおまえとの模擬戦しかないと凹んでいたんだ。メインディッシュはまだ残されているか。」
···本気で取り合った俺がバカだった。
戦闘狂なのは相変わらずだ。
「今の状況は?」
「ここまで来て魔族を挑発した。手当たり次第に蒼炎を放って、因縁の相手を引きずり出せたが···一瞬で終わってしまったんだ。」
「そうか···。」
無計画にも程があるが、自らの力を鑑みた結果なのだろう。そう願いたい。
「ところで、サキナ嬢まで加護者だったのか?」
「サキナは白帝の加護を授かったそうだ。」
「そうか。フェリやパティは蒼帝の血統らしいから、やはり影響を受けたということだな。」
「その辺りは2人に詳しく説明してあげた方が良い。どちらかというと、何も知らずに巻き込まれたような感じだと思うぞ。」
俺はアッシュにそう告げて、サキナと周囲を捜索することにした。




