第4章 朋友 「集う力⑮」
サキナとファフを伴い、スレイヤーギルドの街のすぐ近くまで転移した。
さすがに街中やスレイヤーギルド内に、突然現れるような真似はできない。
ギルドへと向かう道中で何人かが俺の顔を見て驚いていたが、今はそんなことも気にしていられない。
「ファフはここに残ってくれないか。」
「かまわないが、それで大丈夫なのか?」
「現地に行ったら、アッシュと顔馴染みのサキナと俺の方が効率が良いだろう。」
「確かにそうだな。」
ファフはこういった事には効率を最優先してくれるので助かる。
それに、精霊魔法は街中よりも山中など、自然の中でこそ効力を発揮する。人選に問題はないだろう。今のサキナは、背中を任せられるほどの力を有していることは何となく感じられていた。
彼女には簡単に事情を説明してある。協力して欲しいと言うと「もちろん。」と快諾してくれたのだ。
スレイヤーギルドの建物が視界に入る。
外から見る分にはいつも通りだったが、近づくにつれて中の喧騒が聞こえてくるようになった。
「ここに来るのは数ヶ月ぶりよね?」
「ああ。あまり歓迎されないかもしれないが、アッシュを連れ戻すと言えば変な行動に出る奴はいないだろう。」
実際にその可能性は低いと考えられた。
アッシュの身を心配している者が多いからこそ、俺に対する猜疑心が高まったのだといえる。
人間にとって魔族は脅威だ。特別な能力や人並外れた力を持つスレイヤーにとっても、それは何ら変わらない。
功名心や力自慢だけで務まるものではなく、大半が人々を守りたいという高い志を持っているからこそ、危険に身を投じる事ができるのだ。
ギルドの扉を押し開けた。
不意に懐かしさを感じたが、感慨に耽っている場合ではない。
ホール内には多くのスレイヤーが集まり、殺伐とした雰囲気が漂っていた。
「だから、あなた方が現地に向かったとして、死傷者が増えるだけだと言っているんです!」
ガイウスが声を張り上げていた。
気持ちを逸らせたスレイヤー達と押し問答しているようだ。
感情を昂らせて詰め寄る者がほとんどで、こちらに気づく者は誰もいない。
さて、どうしたものかと考えていると、カフェの方から「あ!?」という声が聞こえてきた。
そちらに視線をやろうとすると、とんでもないスピードで何かが突っ込んできた。
「ぐふっ!?」
鳩尾に何かが当たる。
油断した。まさかここで不意打ちをくらうとは···。
俺はぶつかってきた何かに視線をやり、胸の辺りに顔を埋めているその頭を優しく撫でた。
「ただいま、パティ。」
背中に回された腕に力がこもった。




