第4章 朋友 「集う力⑪」
ドォーンッ!
巨大な岩が轟音と共に破壊され、バラバラとその破片を撒き散らした。
平された地面は高温によって溶解し、赤く燻る惨状か残る。
バチバチと蒼い火花を散らしていた右手が徐々におさまり、体内を急激な勢いで巡っていた波動が沈静化していった。
その様相を見ながらリルは身をすくめる。自らが発した力による結果に、恐怖が駆け巡ってきたのだ。
もしこれが人体に放たれたらと思うと、過剰な力とそれがもたらす結果に身震いする。
だが、今後の戦いを考えると、この力を自在に操る技量が必要だという思いがそれを上回った。
パティやフェリにも、それぞれ別の能力が宿ったようだ。そして、自分にもこれまでの適性が昇華されたものが備わった。
風属性に適性があったリルは、叙爵式の日以降に鍛錬を強化してその上位属性となる雷魔法の術者となっていた。それが蒼帝ブラールの力による覚醒で、魔法とは異なる波動として体内に生まれたのだ。
「これをどう使うかは術者次第ね。暴走させないように練度をあげなきゃ···。」
小さく息を吐き心を鎮めたリルは、再び体内の波動を活性化させた。
魔法とは微妙に扱いが違う。
外部からの魔力を取り込み、全身への波動の流れとして変換。それを一点集中で放出させる。
詠唱を紡ぐプロセスがある魔法と比べると、すべてを同時進行させる必要があるために高い集中力が必要となる。
難度が高い分だけ威力も絶大だといえるが、相手が悪魔や魔族でなければ過剰すぎるとしかいえないものだった。
しかし、これは自分に課せられた使命だと思っている。力を持つということは、それを正しく使う義務と責任が生じる。
ドォーンッ!
再び放ったリルの新たな力は、先ほどよりも遠方にある岩山を木端微塵に粉砕した。
ゆっくりと息を吐き、同じ時間をかけて息を吸う。
タイガやアッシュは、こういったプレッシャーを感じるのだろうか。
2人は自分よりも遥かに強い力を持っていた。それは今も変わらないだろう。同じ事が自分にもできるのだろうか。
「考えても仕方がない···か。」
自らの心に芽生えた重責。
アッシュなら、生来の性質で笑って済ますのかもしれない。
そしてタイガは···彼の精神力はおそらく後天的に備わったものだろう。幼少期からの常軌を逸した生活を聞かされたことがある。自分なら、たぶん精神に破綻をきたしていたと思える過酷な日々。
そう考えると、改めて凄い人だと感じると共に、弱音を吐いてはいられないという思考に至った。
両手から蒼い火花を散らせる。
リルが次に放った最大威力の一撃は、1kmほど先の地表に大きなクレーターを生じさせた。
蒼炎雷による燃焼は、窪ませた地表をガラス化させるほどの高熱だった。




