第4章 朋友 「集う力⑩」
パティは掌を纏う蒼い炎を注視していた。
不思議な波動が体を走り抜けたあの日から、突如として現れた力。
同時に流れ込んできた知識が、その力の理解を促してきた。
癒しの蒼い炎。
かつて、タイガがスレイヤーギルドに提唱した融合魔法で、青い炎とは通常よりも高い温度で火力を高めた攻撃を司る魔法だと思っていた。
しかし、自らが放出する蒼い炎は、それとは似て非なるもの。
新たに得た知識がこの力の意味を諭す。
蒼とは生命の源である海や、生物にとって不可欠な水を表す。そして、炎とは生命力を司るものでもある。
パティが操る蒼炎は、それに即した精神の安寧と回復をもたらすものだった。
攻撃手段ではなく、人を癒す力。
蘇生や欠損までを回復させられるものではないが、これまで扱ってきた回復魔法の効果を遥かに上回るものである。十分に有意義なものだと思えた。
「タイガ···これなら、役に立てるよね?」
そうつぶやいたパティは、ぐっと拳を握りしめて蒼炎を消す。
与えられたのは癒しの力だけではない。身体能力についても飛躍的に向上した。
これまでと同様に遠隔的な攻撃手法はもたらされなかったが、自身の得意な能力が強いものとして昇華されたといえる。
パティも、叙爵式の日にタイガがいなくなった時のことをずっと引きずっていた。
何もできない自分。横に並び立てなかった不甲斐なさは、夜な夜な自分を苦しめる悪夢として現れたくらいだ。
でも、タイガが無事だったことを知り、そして今新たな力を得ることができた。
今度こそは、タイガの支えとなって見せる。パティはそう決意していた。
「早く会いたいよ。」
寂しげな笑みが表情に浮かんではいたが、その瞳には強い意志が現れていた。




