第4章 朋友 「集う力⑨」
結局、フェリとマルガレーテは、そのまま虚勢を張らずに共通の話題で打ち解けることとなった。
互いに状況は違うが、共に寄り添い支えとなりたいという気持ちに違いはない。そういった面では、一番理解し合える相手であると気づいたのだ。
「それで、これからどうするつもりなのですか?」
タイガに一目で良いから会いたいと思ったが、フェリは自分の気持ちを抑えることにした。力にはなりたいが、邪魔にはなりたくなかったのだ。
「タイガ様は、この国に拠点を置いて体制を整えたいとお考えのようです。そのためには諸事を片づける必要があると。」
「そうですか。スレイヤーギルドに拠点を移すことはやはり難しいのですよね。」
「ええ。対外的なことを考えると時期尚早かと。」
フェリも叙爵式以来の不穏な空気は感じ取っていた。
普段は学院に通っているフェリだが、他の生徒やスレイヤー達は直接何かを告げてくることはなくとも、明らかに自分にタイガの話題を振ることを避けている。
それはパティも同じだと言っていた。一番懇意にしていたこともあるが、アッシュの更迭や失踪も関係していることは明白といえた。
「何か考えがあるのですか?」
「今は待ちだと、タイガ様はおっしゃっていました。おそらくですが、アッシュ様がお戻りになるのを待たれているのだと思います。」
「兄をですか。」
兄の存在がスレイヤーギルドにとって大きいことは理解している。しかし、王城の采配に異を唱えて更迭されたことは、事態をさらにややこしくしていた。
兄の決断は人間として正しいと思う。しかし、ギルドという組織を束ねる立場を考えると、手放しに喜べないものといえた。
「アッシュ様とフェリさん、それに他のお三方が揃えば一応の戦力は揃います。今のところは動きがありませんが、敵がいつどのように猛威を振るうかはわかりませんから。」
「お三方···あともう1人いるのですか?」
「はい。白帝の加護を持つ方です。」
フェリはリルから聞いた話の中に、その名があったことを思い出した。蒼帝とギルバート家の関係に意識がいっていたために聞き流していたのだ。
「その人も、この大陸に?」
「わかりません。ただ、白帝はこの大陸とは最も距離が離れたところにいます。加護者が存在するかはわかりませんが、いたとしても出会えるかどうか。だからこそ、アッシュ様を介して蒼帝ブラール様から情報を得たいとタイガ様は考えておられるのです。」
今の話だと、アッシュが戻ってくることでいろいろと動き出しそうな気配だった。その時は、迷うことなくタイガと行動を共にしようとフェリは決意した。




