第4章 朋友 「集う力⑧」
ふふっと笑うマルガレーテの声が煩わしかった。
お嫁に行けない体···一体何があったのだろうか。
フェリは自然と苦しさを感じる胸に手をやっていた。
「それは···。」
「はい、何でしょうか?」
勝ち誇るような笑みを見せるマルガレーテに、心が折れそうになる。
しかし、フェリは思いきった質問をすることにした。
もし嫌な想像が事実だとして、それを証明する方法など思い浮かばなかった。タイガにそのようなことを聞く勇気などないのだ。
だからフェリはこう言った。
「タ···タイガには、普段は見えない所にほくろがあるの。それを見たということですよね?」
「え···。」
マルガレーテの表情が固まった。
それを見たフェリは少し心に余裕ができた気がする。
「その場所を知っているということですよね?」
今度は胸を張ってそう言い放った。
「え···ええ。」
マルガレーテの目が泳いでいた。
フェリは確信した。
マルガレーテは誤解を招くようなことをわざと言っている。嘘は言っていないのかもしれないが、想像するような関係ではないと思えた。
「それはどこですか?」
畳み掛けるように言い放つ。
これで自信ありげに答えられたらどうしようもないが、彼女の態度を見る限りそれはなさそうだった。
「そ···それは···。」
「知らないのですね?」
マルガレーテが唇を噛むような仕草をしている。
「あなたは···それを知っているということですか?」
震える声で質問を返してきたマルガレーテを見て、フェリはやはり自分と同じだと感じた。
深く息を吸い込み、次の言葉を慎重に選ぶ。
「知りません。」
「···え?」
「試すようなことをして申し訳ありません。私は、マルガレーテさんと同じなんだと思います。」
「····························。」
マルガレーテはしばらく声を発さずにいたが、やがて何かに気づいたように息を吐き出した。
「こちらこそ失礼しました。大人げなく試すようなことをしてしまい、お恥ずかしい限りです。」
「こちらこそ、失礼なことをしてしまいました。」
フェリは、この人が悪い人ではないと感じた。
何となく目線を合わし、互いに口もとを緩ませる。
「そうですか。あなたも同じなのですね。」
「私だけではありません。タイガは自覚がありませんが、天然ジゴロと呼ばれていますから。」
「ああ···やはりそうなのですね。」
フェリの発言にマルガレーテは得心したようだった。
「行く先々で変なフラグを立てては破壊するフラグ・クラッシャーとも呼ばれていました。」
「フラグ・クラッシャー···。」
絶句するマルガレーテは遠い目をしていた。




