第4章 朋友 「集う力⑦」
「なぜこの場所に?」
フェリはマルガレーテと名乗る女性に訊ねた。
この国の者ではないだろうが、上位の貴族出身だと感じられる。気品や物腰、プライドの高そうな所などはある意味で典型だといえたのだ。
タイガと行動を共にしている事に関してはかなり気になっているのだが、ここで安易にそれを出すと負けてしまうとなぜか思ってしまった。
「あなたにも感覚的にわかるのではないですか?」
「加護者、それとも冥護のことですか?」
「やはりそうでしたか。」
マルガレーテは少し考え込むような素振りを見せた。
「タイガは、あなたに私の事を話したのですよね?」
「···ええ。気になりますか?」
タイガが彼女に何と話しているのかが気になった。しかし、ここでそれを聞くと意地を通せなくなる気がする。フェリは表面的には平然とした態度をとった。
「いいえ。それより、彼は元気にしているのかしら。」
「大丈夫です。タイガ様には私がついていますから。」
その答えに少しむっとしたが、それでタイガとマルガレーテの関係が何となくわかった気がした。
「そうですか。無事なら良かった。彼は強いけれど、よく無理をするから。」
「そうですね。それは重々感じています。」
「あと、よく勘違いをされる。特に女性に。」
「···そうですね。」
マルガレーテが一瞬言葉に詰まった。
やはりそうなんだと思った。たぶん、この人も振り回されている。
「タイガは普段は端然としているけれど、意外と変な所が鈍いから。」
「それはもう。時折、わざとやっているのかと思うくらい。」
当たりだ。
フェリは少しほっとした。
マルガレーテの言葉からは、一定の距離から縮められない焦燥のようなものが感じられる。
自分と同じだと思った。
だが、マルガレーテの次の言葉が衝撃的だった。
「初見であんな事をしたくせに···。」
「あんな事?」
「そうです。あんな···口に出して言えないようなことを···。」
一体、タイガはマルガレーテに何をしたのだろうか。言葉のまま解釈すれば、男女の一線を越えたかのようなニュアンスだが···。
「一体、何をされたのですか?」
「···気になりますか?」
マルガレーテの表情に余裕が戻った気がした。
フェリは出す言葉を間違えたと思った。タイガのことだから、女性を泣かせるようなことはしないだろう。特に貴族とのそういった関係については、恐ろしいほどの防衛本能を持っていたはずだ。
ちらっとマルガレーテを見る。
本当にきれいな人だと思う。もし彼女が、タイガに迫ってそういった関係になってしまったのだとしたら···ありえないとはいえなかった。
「お嫁に行けない体にされてしまいました。」
フェリの様子を見たマルガレーテが、薄らと笑みを浮かべてダメ押しの一言を放ってきた。
「!?」
フェリに会心の一撃が突き刺さった。




