第4章 朋友 「集う力⑤」
『む···何か来るぞ。』
ジーンにこれまでの事を話していると、上空より何者かが接近していた。
フェリもその気配を感じていたが、不思議な感覚に包まれた。
「これって···。」
ジーンと出会った翌日、リルやパティからも似たような雰囲気を感じていたのだ。
『これは···そなたと同じ側の気配だな。』
「同じ側?」
『我も直接会うのは初めてだ。蒼帝ブラールとは違う別の守護者の加護を持つ者ではないかと思う。』
アッシュではないだろう。兄は蒼帝ブラールの加護者だ。それにリルやパティからは、属性のようなものと人としての個性のような波動がそれぞれ別のものとして感じられた。それと同じだとすると、知らない人間ということになる。
『敵意はなさそうだ。我は姿を消した方が良いか?』
「いえ、そのままいてもらった方が心強いわ。」
精霊は不可視の存在としてその場にとどまることができる。しかし、姿を見せたままの方が牽制になる。
フェリは迫ってくる相手に脅威を感じていた。
敵意に関しては感じない。しかし、凛としたその雰囲気は強い意志の力を伝えてくる。そして何より気になっているのは、相手がタイガと行動を共にしている女性ではないかということだ。
タイガに悪意がないのはわかっているが、彼は無意識にある種のオーラを放ち、言動で人を懐柔する。スレイヤーギルドの一部では”たらしオーラ”とも呼ばれるそれは節操がない。
想像したくはないが、リルが話したように四方の守護者に関係する者が特にその影響を受けやすいのだとすると、すでに手遅れの可能性もあった。
そう。
今感じている脅威とは、女性としての対抗心と防衛本能なのだ。
魅力という点については大人の女性には敵わない。だからといって、マウントを取らせる訳にはいかなかった。
フェリにとって悪魔や魔族、邪神を相手取るということはもちろん大事なことだ。
平和な生活や人々を脅かす脅威には当然抗わなければならない。しかし、それとは別にこの感情は無視できない。貴族として生まれ、一夫多妻制が不自然とは思わない環境にいる。そういった意味では独占欲が強いわけではないが、やはり他の女性には負けたくはなかった。
そう考えていると、感じていた気配が間近に迫り、上空から真っ直ぐに降りてくる者を視界に捉えられるようになっていた。
やがて、悠然と目の前に降り立った相手を見たフェリは、思わず一言つぶやいてしまった。
「やば・・・。」




