第4章 朋友 「集う力④」
『我ら精霊が依代を欲する理由は知っていると思う。』
精霊ジーンはそうフェリに問うた。
「力を安定させるためね。」
『そうだ。すべての精霊がそれを必要とする訳ではない。それに、依代がなくとも自らの存在が消える訳でもない。』
一般的に依代を求めるというのは、力の安定や地場から霊力を補ったり、住処として定着する意味合いがある。動物でいう縄張りに近いといえた。
『力の弱い精霊は依代を求めて彷徨うことが多い。それはそうしなければ、存在を維持することに力の大半を使ってしまうからだといえる。しかし、我の場合は逆の意味合いがあるのだ。』
「逆というと、力が暴走するというの?」
『そうだ。我は同じ属性の中では最も強い力を有しているといえるだろう。あの大精霊サラマンダーをも凌ぐ。しかし大精霊とは、自らの力を制御しうる器を己で有しているのだ。だから依代を必要とはしない。』
「あなたは自分の強過ぎる力を危惧して、依代を求めていたということね。」
『うむ。これまでは精霊界・・・人からすれば異界になるが、そこで時を待っていた。我の蒼炎に順応し、力を抑制できる器。それがフェリ、そなたなのだ。』
ジーンの話のほとんどは精霊魔法士であるフェリには理解ができた。しかし、自分がその器としてふさわしいかどうかはわからなかった。
「それは蒼帝ブラールの力によるもの?」
リルから聞いていた話が脳裏をよぎる。思い当たるのはそれだけだった。
『蒼帝ブラールは我と同じ蒼炎の力を持つ。そして、その冥加を授かり精霊と寄り添えるそなたは、唯一の適正者なのだ。』
「私がその・・・蒼帝ブラールの冥加を授かったのは最近のことだと思う。あまり詳しいことは知らないの。」
『我もその辺りは知らぬ。だが、そなたは蒼帝ブラールの血族であるということはわかるぞ。波動の性質が同じだからな。』
「やはりそうなのね。」
兄がそれらしい事を言っていたとはリルから聞いている。しかし、リルにも事情が詳しくわからないらしく、推測で考えられる話だけをしてくれていた。
『そなたを依代とすることは、我にとって大きな恩恵をもたらす。力の暴走をふせぎ、他の精霊や存在に悪い影響を与えずに済むからな。しかし、我だけがそれを享受するのは心苦しい。そなたとは対等な関係を築きたいと思っている。既に契約はしているが、困ったことがあれば力を貸そうぞ。』
いろいろと現実味のないことが起こっている。しかし、フェリは単純に考えることにした。
「手助けしたい人がいるの。力を貸してくれる?」
フェリはジーンにそう言い、これまでの経緯を語った。




