第4章 朋友 「集う力③」
「来て、ジーン。」
街からかなり離れた位置にある荒野。
そこでフェリは、先日契約に至った精霊を呼び出した。
フェリの右手から蒼炎が迸り、1ヶ所に集結する。
やがて人の形を成したそれは、フェリに対して声を発した。
『呼んだか、フェリ。』
全身に蒼炎を纏った女性。
神話で語られてきた炎の大精霊サラマンダーに匹敵する力を持つといわれるイフリート。ジーンはその女性版ともいえるイフリータだった。
あの日、フェリは突然現れたジーンに『我の力を求めるか?』と聞かれ、それを受け入れた。
しかし、混乱していたこともあり、兄やタイガと共に戦える力を手に入れることだけに意識がいってしまっていたといえる。
ジーンに不浄なものは感じなかった。
精霊魔法士特有の感覚で、邪悪な意思や波乱を呼ぶ存在ではないことも理解している。
ただ、精霊の中でもレアな存在であるはずのイフリータに、詳しい事情を聞きたいと思っていたのだ。
機会を見て、ようやくそれが実現できるように今の地までやって来た。
さすがに街の中やその近郊でジーンが顕現するのは目立ちすぎるからだ。
「改めて聞かせて欲しいの。あなたがどうして私の前に現れたのかを。」
『わからぬか。そなたは我を受け入れる器を持っている。精霊とは依り代を求める存在。だが、我の力が大きすぎて、これまで依り代となる器を見出だすことが叶わなかった。』
依り代とは、精霊などの外来魂が宿るといわれるものだ。
それは木や石といった森羅万象がなりうるものとされている。
「人が依り代にされるというのは聞いたことがなかったわ。」
『人や動物も木や石と変わらぬ。あらゆる事象の一つであろう。』
「それはそうだけど···マナが他の生物に宿るというのは憑依というのではないの?」
『憑依というのは乗り移ることであろう。我は精霊だ。依り代としてそなたの中に入り込みはすれど、意識を乗っ取るつもりはない。』
実際にジーンと契約してからは、意識が飛んだり就寝中に勝手に体を支配されるようなことはなかった。それは屋敷にいる使用人達にも確認していた。
「どうして私の前に現れたのか聞かせて欲しいの。あなたは覚醒といったけれど、私の身に何が起こったのか知っているなら教えて欲しい。」
『わかった。では、我の知る限りのことを語ろう。』




