第4章 朋友 「集う力①」
サキナ・フォン・ディセンバーは、白い息を吐きながら青い氷で包まれた洞窟を突き進んでいた。
自国を出る前に四大精霊の中でも風を司る精霊シルフィードと契約ができたことが大きかった。
すぐにでもタイガと合流したい気持ちはあったが、共に歩むためにはまだ力が足りないと考えられたのだ。
過去に失敗した上位精霊との契約。それを果たすことで力を強め、以前までの非力な自分と決別したいと思いこの極北の地に出向いたのだ。
シルフィードの力により断続的にではあるが飛行が可能となり、険しい山間部や大河をたやすく越えて来ることができた。
シルフィードとの契約は精霊の方からの申し出で、加護者となった自分に庇護を求めてきたことが要因だ。サキナはそれを快諾し、移動の際に力を貸してもらっていた。
この洞窟に入るまでには雪彪などの強力な魔物との戦闘は避けられなかったが、今のサキナにとってはそれほど苦労する相手ではない。
今の力は自らが勝ち得たものとはいえなかった。だからこそ、上位精霊に認められることで自信を持ちたいと思ったのが本音である。
最奥部に到達した。
やはり青い氷に囲まれた幻想的な空間。そこに目的のものがいた。
『久方ぶりに向かって来る者がいると思っていたが、過去に見た顔だな。』
氷の上位精霊であるフェンリルヴォルフである。
氷雪の魔狼とも呼ばれる獰猛な精霊で、過去に契約できた人間はいないといわれていた。
「顔を覚えていてくれたとは。光栄だな。」
『覚えているさ。涙を滲ませながらも何度も立ち向かって来た小娘だ。恐怖に抗い、力に屈しないその様は脳裏に刻んでいる。』
「何年も前の話だ。もう一度挑戦させてもらいたい。」
『随分と強大な力を手にしたようだな。』
その言葉に、サキナは自嘲の笑みをもらした。
「借り物の力だ。だが、だからこそ自身の力で歩みたいとも思っている。」
『良い心意気だ。それでこそ器として認められたのかもしれぬな。よかろう、小娘の意地を見せてみよ。』
フェンリルヴォルフがそう言った瞬間、新たに同様の2体が現れた。
『我が同腹のヨルムンガルドとヘルだ。今のお前にはこれで拮抗するだろう。』
フェンリルヴォルフの神話では、彼等は三兄妹だと綴られている。まさか、それをこの目で見ることができようとは思いもしなかったが、サキナはそれでこそ挑戦のしがいがあると思った。
「ありがとう。よろしく頼む。」
双方は戦闘態勢に入った。




