第4章 朋友 「新奇⑯」
「!?」
学院から家に帰った後、フェリを不思議な感覚が包んだ。
「精霊···。」
精霊が騒ついている。
あまり感じることのない兆候だった。
契約している精霊はこちらの望みに応じて力を貸してくれるが、互いに過剰な干渉をすることはない。精霊契約とはそういったものだ。
それなのに、今は精霊達が何かを自分に訴えようとしている気がした。
窓を開けてバルコニーに出る。
特に異常は見られない。
そう思った時、世界が静止したかのような静寂に包まれた。
突然の青白い光に包まれる。
一瞬目を閉じたフェリの前に、強い霊力の奔流のようなものが現れた。
「あ···。」
『そなたの覚醒に応じて現れた。我の力を求めるか?』
目を開いたフェリの前には、蒼炎を身にまとった存在がいた。
「「!?」」
同じ頃、自宅の食堂にいたフェリとパティが同時に顔を見合わせる。
「お姉···今の···。」
「ええ···私も感じたわ。」
2人は体の内面に強い力の波動を感じていた。
突如現れたそれは、全身に澄み渡るように展開していく。そして、すぐに意識の中に新たな知識が流入し始めた。
パティは無意識にその違和感に抵抗しようとする。
「きっと大丈夫。これはたぶん蒼帝の力の波動よ。」
冷静に話すリルを信じてパティが体の力を抜く。
リルにも確証があったわけではない。しかし、タイミング的にアッシュが何かを成功したのだと感じていた。
彼は「目的が果たせそうだ」と言っていた。そして、それは「私達にも関係があること」とも。
アッシュの性格は把握している。
彼は困難があればあるほど立ち向かおうとする。やるべきことがはっきりとしたのなら、命を賭してでもそれを果たそうとするだろう。
頼りきりになって申し訳ないとは思うが、このきっかけで協力できるようになれば違う形で返せば良い。リルはそう思うことにした。
「これが加護か···。」
アッシュは体内に吹き荒れるような力を受け、蒼帝ブラールに問う。
『人間というのは常に余力を残している存在でな。常態では潜在能力の3割程度しか使っておらん。加護を持つということは、それを超えて長時間耐えうる基盤を持つということだ。』
「なるほどな。」
『だが万能ではない。その限界値を引き上げるための研鑽を重ねる必要があるだろう。それと、魔法や蒼炎を使う場合には注意せよ。』
「注意というのは?」
『魔法は脳で複雑な処理を行い実現されるものだ。蒼炎も同じ・・・いや、それを以上といえる。普段でも脳というのは全体の2割に及ぶエネルギー消費を行う。術者の行為によって、それが何倍、何十倍にも膨れ上がる。』
「力の枯渇に陥るということか?」
『そうだ。そして、限界を超えないように制限することが重要だ。』
「限界を超えたらどうなる?」
『脳が焼きつくと形容すべきかな。』
「···わかった。気をつけよう。」
『うむ。ああ、おまえの血縁者も波動の影響を受けたようだ。それぞれに持てる力は違うが、同じように注意を促しておくことだ。』
「そうか。感謝する。」




