119話 大切な居場所⑪
バーネットが俺を足止めする。
大型の盾をうまく操り、視界を遮り進路を塞ぐ。抜け出すのにはかなり苦労をしそうだ。
盾を小刻みに動かし、フェイントを入れている。
動きに無駄がなく、速い。これはバーネット本人への攻撃を難しくすると同時にフェリやテスの動きまで見えなくする効果があった。
後方に気配を感じて横に回避。
パティのダガーが空を切る。
バーネットは俺の動きに合わせて平行に動き、正面の位置をキープし続けている。
盾術がこれほど厄介なものとは想定外だった。
後方からパティの斬撃。
正面からの盾で払うような動き。
かわしたところを後方からのシスの氷柱。
完全にハマってしまった。
視界の端からは盾の向こうから炎撃が繰り返されているのが見える。フェリとテスによる牽制でリルも動けないようだ。
俺はバーネットの実力を見定めるために武器は持たずに模擬戦に参加していた。これがこの状況を作ってしまった原因でもある。
実戦に置き換えて考えれば、武器を使った攻撃でパティやシスを先に倒す。その後にバスタードソードなどでバーネットの盾を力で叩き伏せて突破するというのが攻略法といったところだろう。
膠着状態が何十秒か過ぎた頃にシスの氷柱が俺達のフラッグにヒットした。
初めての連携としては及第点だろう。
「まいったな。5人とも良い動きだったよ。」
模擬戦を終えて感想を言う。
「本当ね。してやられたわ。」
リルも悔しさよりも頼もしさを感じているようだ。
フェリとテスがリルを足止めし、バーネットとパティが俺を間合いから逃さなかった。それを見ながら冷静にフラッグを倒したシス。
5人がそれぞれに役目を果たし、持ち味を出したと言える。
「タイガが武器を持っていたら結果は変わっていたと思う。」
パティはしっかりと状況を把握できていたようだ。
「そうね。でもバーネットの盾がなければ今の状況でも突破をされていたわ。盾術って総力戦ではすごく頼もしい存在。」
フェリもバーネットの盾術の有効性を理解している。
「今の連携の精度がもっと上がれば本当に強いパーティーになりそうね。」
「じゃあ、もっと連携の特訓をしなきゃだね。」
全員が今後の課題に気づき、前向きに考えてくれている。
頼もしいパーティーになりそうだ。
その頃
「あっ!模擬戦···終わってる···。」
ギルマスの執務室ではアッシュが一人で肩を落としていた。




