11話 コードネーム「ザ·ワン」
「「「「はあ!?」」」」
魔力を持っていないことをカミングアウトすると、予想以上の反応をされてしまった。
しかし、美女&美少女の眼が点になっている表情はあまり見たくはないぞ。
「魔力がないなんて・・・よく生きてこれたわね。」
お姉さんが不憫な子を見るような眼差しをしている。できればやめて欲しい。
他の3人は「冗談だろ?」というような表情であったり、幽霊を見たかのような微妙な反応である。
どうやら、この世界では皆が皆魔力を持っているのがデフォルトのようだった。
「聞きたいことはいろいろとあるけれど、とりあえず自己紹介から始めない?」
お姉さんはにこやかにそう言った。
「タイガと言うのね?東方の出身なの?」
自己紹介を済ませると、お姉さんが質問してくる。
彼女の名前はリルスター・ギルバートで、アッシュの従姉妹だそうだ。何だかんだでこの四人の中で一番しっかりとしている。関係ないが胸も大きい。
そういや、明らかに年長と見えるおっさんは、子供じみた発言が多かった。いわゆるとっちゃん坊やというやつだろうか。
銀髪ちゃんはやはりアッシュの妹でフェリシーナ・ギルバート、おっさんはラルフ・ヒットマンといい、ギルバート家の分家筋だそうだ。
因みに、アッシュだけがミドルネームが着いているのは勲章を授与しており、騎士としての爵位を持っているからとのこと。
「東方と言えばそうなんだが。」
この四人からは邪気は一切感じられなかった。
俺は生まれついて特殊な能力を有している。
理論的な説明は難しいが、相手の内面が正と負のどちらに傾いているかが直感的にわかるのだ。
例えば、正論を振りかざし、清廉潔白を売りにしている政治家がいたとしよう。そいつが内面的にもそうなのか、実はどす黒い奴なのかは直接会えば感じることができる。また、武芸の鍛練により広範囲で気配を察知することができるのだが、これはその能力にも応用ができた。先ほど遠方から魔族の邪気を察知できたのはそのためだ。
元の世界で属していた組織では、俺のこの能力は「思想判定」と呼ばれており、特殊スキルの一種と認定されていた。
世界で唯一俺だけが持つスキルのため、コードネームはザ・ワン。この能力があったからこそ、消耗が激しいエージェントの中でこれまで生き延びてこられたと言っても過言ではなかった。