第4章 朋友 「新奇⑦」
バカ貴族の周辺調査を行った。
と言っても、バルトールが話していたように叩けば埃が出る身だ。数時間の調査で様々な悪行が出まくった。
所属している大学に行き、聞き取り調査を行う。これは対象に縁談の話があり、婚姻の申し出を考えている貴族側の調査員という名目で名を伏せて実行した。
バカ貴族は職場でも嫌われているらしく、それとなく近づいた他の職員たちからは数多くの悪評が寄せられた。権威を傘に着ながらの横暴だけでなく、優秀な学者を陥れたり、女生徒にセクハラまがいの行いをするなど絵に描いたようような小悪党だったが、それ以外にも夜中に忍び込んだ研究室で決定的なものが出た。
大学の予算を私用に流用しているとはっきりわかる帳簿が執務机の引き出しから出てきたのだ。余程親の威光に自信があるのか、自分の私物が漁られるとは考えていなかったのだろう。警戒心がないか、罪悪感がないかはわからないが、相当な痴れ者というしかなかった。
他にも今回の調査における公金の流用などを証拠として揃えることができたので、それらをまとめてバルトールに提出し、大公には事の顛末を通信で説明しておいた。
結果として迅速な処置がなされ、バカ貴族は翌朝には身柄を拘束されて余罪を追求されることになる。
その後、父親である侯爵に関しても議会の調査で日頃の不正が明るみにされ、結果として廃爵に追い込まれることになるのだが、それは俺の知ることではない。普段から悪名高い貴族が因果応報の審判を下されたに過ぎず、これで多少なりとも王城や議会が浄化された結果となった。
この一連の流れが他の貴族への牽制にもつながり、国王や大公の俺への評価がまた上がることになったようだが、それに関してもこちらの不都合を解消した副作用のようなものでしかない。
「いやぁ、半日でバカ貴族を排除とは恐れ入った。さすがとしか言いようがないな。」
翌日の夕方に訪れたグランドマスターの執務室で、バルトールは上機嫌に高笑いをしていた。
普通に考えれば簡単な謀策でしかないのだが、貴族のしがらみの中ではこういった動きもなかなか取れなかった実情もあるので、バルトールからしてみれば痛快の極みなのかもしれない。大公からも労いの言葉があったのだが、改めて貴族社会の面倒くささが浮き彫りになった状況だ。
「とりあえず、これで開拓村の件はフラットになったかと思います。」
「そうだな。冒険者ギルドとしては、これで何の問題もなくなるだろう。予算に関しても、やはりバカ貴族のせいで配分がおかしなことになっていたらしいから、修正案が今日中にでも出るそうだ。」
結局、予算が割増しされることになり、開拓村の護衛として何名かの冒険者が派遣されることになる。俺たちも同行するのだが、目的が他にあるためにバルトールの配慮で有事の際のサポート役ということで人員編成の中に入れてもらう運びとなった。




