第4章 朋友 「新奇③」
チェンバレン大公との話を終えた俺は、一度宿に戻ってから1人で王都をぶらついていた。
今後のことを考えるために頭の中を整理する。
半ば想定内だったとはいえ、大公の話を聞く限りでは状況的にあまり良い状態とはいえなかった。
今のままでは正体を晒して動き回ることが難しい。政治的な背景からとはいえ、活動に制限が生じるのだ。それを無視して動き回ると、いずれ何らかの勢力が拘束しようとしてくる恐れすらあるのだ。
現状を打破する方法は何パターンかあった。しかし、それは他の者たちを巻き込む形になる。最悪の場合は、俺に加担したとして連帯責任を問われる可能性も高いといえるだろう。
ふと、人だかりが目に入る。
何かの催しか特売でもやっているのかと思ったが、雰囲気的にはそうでもなさそうだった。
近くまでいくと、人垣の向こうに大きな掲示板があるのが目に入る。
記載されている内容に目を走らせると、開拓村の人員募集のようだった。場所はスレイヤーギルドから真西に50km程度。王都から見て少し手前の位置になる。
なぜそんな場所に?
あの辺りには何もなかったと記憶している。確か1000年以上も前に干上がった湖があったらしく、植物も繁らない平原だったはずだ。
興味を惹かれて詳細を確認してみる。
第一陣は調査や研究のために学者が出向くそうだが、それに随行する作業員や護衛のための冒険者を募っているらしい。
冒険者に関しては、冒険者ギルドを介しての委託だそうだ。案件自体は王城からの公的事業だが、事前の現場調査の段階のようで公職の参加はほとんどなかった。
あまり身入りの良い内容でもないので、すぐに人の波はおさまっていく。
「質問をしてもかまわないかな?」
事業の担当者らしき者に声をかけてみた。
「何でしょうか?」
「この案件が長期的なものになる予定は?」
「調査の結果しだいですが、その可能性はあります。その場合は新たに人員を募ることになるでしょうが・・・冒険者の方の場合は、同じ方に依頼を継続してもらう可能性が高いと思います。」
冒険者の話が出たのは、俺を見てそう感じたからだろう。こういった案件では、人間性にさえ問題なければ同じ者に依頼を継続してもらった方が護衛される側も気疲れがないといえるからだ。
「ということは、何かの資源がみつかったということかな?調査の結果、それなりの産出量が見込めれば永続的な案件になるとか。」
「まだ確定ではありませんが、そうなりますね。」
資源のことなので、担当者はそれ以上の詳細を説明することはなかった。
あまり詳しい情報を広めると横やりをいれてくる者がいないとも限らないからだろう。資源によっては先んじてそれを奪おうとする奴らが出てくる可能性もあるからだ。




