第4章 朋友 「蒼帝ブラール④」
気配を追っていたアッシュは立ち止まった。
10m程の高さの岩壁に行き当たったからだ。
気配は上ではなく岩壁の中を進んでいる。瞬時に視線を動かして洞穴の様なものがないかを探ってみるが見当たらない。
アッシュは目を閉じて魔力を放った。
攻撃のためではなく、魔力をソナー代わりにした気配察知を行ったのだ。
薄い魔力壁を全方位に伝播させて地形や生物の位置を読む。こちらの世界では一般的な手法といえるものである。
岩壁に接触した魔力の一部が不自然な挙動を起こす。アッシュはその場所へと歩みより、岩壁に手を触れようとした。
「!?」
アッシュの腕は何の感触もないまま岩壁をすり抜けた。
「幻影?」
魔力で形成された実体のない岩壁のようだ。
そのまま手を動かすと、2m四方が入り口の様になっている。
何かの罠とは思えない。
もしかすると、蒼帝ブラールが誘っているのかもしれなかった。
アッシュは躊躇わずに顔を突き入れて中の様子を伺う。
一見、普通の洞窟の内側に見えるが、ヒカリゴケでも生い茂っているのか中は明るかった。
そのまま前へと進み、気配を追う。
岩肌がくっきりと見えるだけで何の変哲もない空間。しかし、入口が魔法で隠蔽されていたことがアッシュの好奇心を掻き立てた。
念のために警戒は怠らないが、魔物が生息している様な気配はない。
むしろ、洞窟とは思えないほど澄んだ空気が逆に違和感を持たせる。
ゆっくりと歩みながら、空気を読む。
気配ではなく、周囲を包む自然の摂理をだ。
何気ない日常では、それは当たり前のことかもしれない。
万物が支配する。それが世の理だといえよう。
『果たしてそうかな?』
突然、自分の思考に介入する存在がいた。
「いや、俺はそれを肯定しない。」
アッシュは歩みを止めずに声に出してそう答えた。
『ほう。では、どうする。』
「俺の友人にとてつもなく強い奴がいる。そいつは相手が英雄や神だったとしても、不条理には徹底的に抗うだろう。」
『その友人とやらに依存するというのか。』
「まさか。そんなことをしていたら、友人なんて名乗れやしない。」
『ではどうするのだ?』
「だからあんたに会いに来た。だが、もしあんたが力を貸してくれないというのなら他の方法を模索する。」
『ふん•••似ておるな。』
「もしかして、クルトのことを言っているのか?」
『そうか、末孫だったな。』
「俺はクルトのことはほとんど知らないし、どういった性格だったなんかに興味はない。教えてもらいたいのは、どうすれば加護者に匹敵する力を得れるかだ。」
『単純明快なところはそっくりだな。よかろう、この先に広間がある。そこまで来るが良い。』
アッシュは口もとを綻ばせながら歩みを速めた。




