第4章 朋友 「波乱⑥」
宿を確保してから情報収集を兼ねて街に出た。
今の状況では、あまり顔見知りのいる所には行かない方が良い。ただ、試してみたいことがあったので、それを実行してみることにする。
スレイヤー認定証のことだ。
スレイヤーとしての登録が削除されている可能性もあったが、そうでなければ報酬分を買い物の決済に使えるはずだった。払い出しもできるが、それにはスレイヤーギルドに出向く必要があるため、そちらは今のところ使えない。
指名手配のようなものを受けているのなら、買い物で決済した瞬間に通報される可能性もあるとは言えるのだが、それは低いと感じていた。
理由は新しくギルドマスターに就任したガイウスの存在だ。彼は抜け目がない。俺の所在や生存の確認にために、スレイヤー認定証の使用履歴をそれとなくチェックしている可能性が高いと考えられたのだ。
もちろん、スレイヤーギルドの事務員あたりにもそれがバレてしまうだろうが、ガイウスの性格を考えると携わる者に緘口令を敷いていると思われた。
ガイウスが味方でいてくれるかどうかは一種の賭けではある。ただ、彼の言動や性格を考えると俺を阻害する要因は低いといえる。それに、自分の”ソート•ジャッジメント”による判断を疑う余地はなかった。
認定証での決済が可能な店を探し、そこでクリスが必要とする素材を購入した。
認定証は盗難などで悪用されないように、個人が特定できるプロテクトが入っている。声による照合なので本人であるという証明になりうるのだ。スレイヤーギルドではその使用履歴を検索することができるので、マークさえしていれば俺の所在を掴むことが可能なのだ。
それによってガイウスがすぐに何らかのアクションを起こすかはわからないが、俺の生存を知らしめることにはなるだろう。その結果として、今の微妙な事態を動かせる可能性があると考えていた。
とりあえず、俺が拘束されない確証さえ持てれば、クリスが能力を存分に発揮できる環境も作ることができるだろう。それに、アッシュの消息についての情報も得ることができるかもしれないのだ。
種を蒔き芽吹きを待つ。
今はタイミング的にその状態を作るしかなかった。
あとは大公の帰りと、スレイヤーギルドからのアクションを待つ時間といえた。




