第4章 朋友 「再びの大地⑮」
「思っていたより、ひどい状態ではないようだな。」
シニタで聞き込みをしていたファフとマルガレーテは、互いに得た情報を共有するために街中にあるカフェで合流していた。
「ええ。もともとここはアトレイク教の本部がある街ですから、信心深い方が多いのでしょう。英雄テトリアのことはともかく、神アトレイクを悪く言う人は、表面上にせよあまりいませんでした。」
「そういえば教会の人間なのだろうが、テトリアとタイガのことを神に仇なす罪人のように言っている男が1人だけいたな。」
「それは金髪の厳めしい男性ではないですか?」
「ああ、そうだ。俺こそは神の使徒だとか何とか酒場でブツブツと言っていたな。名前は確か···ラルフだったかな。周りもあまり相手にしていなかったから、気にしなくて良いと思うがな。」
「おそらく私が見たのも同じ男性ですね。どういう人間なのかを他の人に尋ねましたが、相手をするだけ無駄という答えが返ってきました。」
「まあ···その通りなんだろうな。」
ファフは目の前のティーカップを手に取り、冷めかかった紅茶をゆっくりと口に含んだ。
「これからどう動くかですね。幸い、タイガ様のことを悪く言う者はそれほどいませんでした。」
「大勢の信者が、魔族を倒し聖騎士団長の命を救った所を目撃しているからな。伝説のように語られている英雄テトリアよりも、近しい存在と考えてたとしても不自然じゃない。それに、タイガのあの性格だ。接したことがある人間なら、それほど悪い印象は持てないとも思う。」
「ええ。それは同感です。むしろ、聖騎士団長と聖女様がどう思っているかの方が気になります。」
「何か耳にはさんだのか?」
「タイガ様が消えた後、その2人が必死にタイガ様を擁護していたとか···あれは、たらしこまれていますね。」
「···それは否定できないな。ただ、それだったら、その2人に接触するのが早い気がするな。」
「ええ···。」
そこまで話した時に、2人に近づいてくる者がいた。
ファフもマルガレーテも、少し前からこちらへの視線に気づいていた。だからこそ、少し声のトーンを上げていたのだ。
「突然で申し訳ないが、少し話を聞かせてもらえないだろうか?」
2人の前にやって来たのは、貴族のようにきちんとした身なりをした1人の女性だった。
鎧こそ着てはいないが、腰にある剣と凛とした雰囲気が騎士然として見える。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「これは失礼した。私は聖騎士団長クリスティーヌ・ベーブスという。」
マルガレーテの言葉に、女性は礼儀正しくそう名乗った。
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