第4章 朋友 「再びの大地⑭」
薫製のために木箱を作ったが、大した道具もないのであまり精度は高くない。
それでも時間をかけることで何とか薫製が完成した。
クリスは研究のための素材を抽出するために、植物についてもかなりの知識を有していた。
それを活用しながら近くで取れる草木を集め、薫製にすりこむスパイスやハーブ代わりにしてみたが、味付けはかなり良いものとなった。
便利な知恵袋である。
たまにわけのわからないことを言い出すので注意が必要だが、組織にいた頃に比べると、自由意思で好きなことに時間を割けるからか終始ご機嫌だった。
食事をとり、片付けを行った後にソルに体術を伝授する。
あまり戦闘要員として見なしてはいないが、護身のためにできるだけ身につけておいてもらった方が安心できた。
無理強いはしたくなかったが、ソルが楽しそうに取り組んでくれるので気持ち的にはやりやすい。
今の彼女の力はそれほど強くない。さすがに普通の人間よりは全体の能力は高いが、魔族や悪魔と対等に闘えるほどのレベルではなかった。
しかし、目的はあくまでも護身のためだ。有事の際に逃げるための手法の一環として教えているので、及第点といえる結果は出ていた。
夜になると1人で焚き火を眺める。
ソルは馬車の中で、クリスは傍で寝ている。見張りのために起きているのだが、何回かに分けて仮眠をとっていたので眠気はない。
ファフとマルガレーテの調査がどういったものになるのか、何パターンかを想定してみる。
教会側が俺に対して敵対視している場合、中立的な立場で傍観しようとする場合、噂に影響されずに協力的な場合。大別してみると、その内のどれかだろう。
協力的なら情報を得るために接触する。それ以外なら避けた方が無難だ。
教会は個人ではなく組織だ。当然のことだが、様々な意思が働く。
ソート・ジャッジメントがある限り相手の謀計には早い段階で気づくことができるが、それが形になる前に排除をすることはできない。
そんなことをすれば完全な孤立を生む。身に危険が迫った場合は動くが、それまでに仲間に危害が及ぶ可能性も考えなければならない。
こういったことが想定されるので、エージェント時代は気を許せる仲間などを持つことはなかった。
難しさはある。
だが、それとは別の充実感のようなものを感じた。
自分は孤独ではない。
そう思えることが嬉しかった。
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新作、「芒星の勇者 ~勇者として召喚されたけど、好き勝手に生きて何が悪い~」も同時連載中です。こちらもよろしくお願いします。
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