第4章 朋友 「再びの大地⑫」
アトレイク教会本部があるシニタ。
それなりの日数を費やして、ようやくその都市の手前まで来ていた。
これまで何ヵ所かの街や村に立ち寄ったが、シニタに近づくほど嫌な噂を耳にするようになっている。
テトリアの悪い噂が独り歩きし、さらにアトレイク教の威厳も落ちてきているというものだ。
テトリアは神アトレイクの使徒と目され、かつて魔族の侵攻を防ぎ人類を救ったと言われていた。
しかしそのテトリアが邪神側に組みし、人間側にとっての脅威と考えられる存在になったとすると、神アトレイクへの信仰にも揺らぎが生じるというものだろう。
結果として、この短い間でいろいろと悪い影響が出ているのは必然といえた。
加えて、前の大司教が起こした事件がさらに事実をねじ曲げているのはいうまでもない。
俺はあの時の対処で多くの信者の前に顔を晒してしまっている。
慎重に動かなければ、テトリアに荷担している者として断罪される可能性すらあるということだ。
「なるほどな。そのようなことがあったのなら、俺かマルガレーテが先行して様子を見た方が良いだろう。」
「そうですね。可能なら、聖女クレア様にお会いして、状況をお聞きするのが最善かと思います。」
確かに、ファフとマルガレーテが言う手段が最善だろう。
「タイガも念のために変装した方が良いんじゃない。」
無邪気な顔でそんなことを言うソル。
「変装か···。」
正直、嫌な思い出しかない言葉である。
冤罪で追われた俺はスキンヘッドで風貌を誤魔化していた。あの時は卑猥な物を連想すると言われたり、極めつけはティルシーにプレゼントされた目鼻口頭出し帽を知らずに被って周囲を絶句させたものだ。
「あの時は変装のために頭を剃りあげていたからな。逆に今のままでも、ある程度は雰囲気が変わって映るはずだ。」
希望的観測が強く入り交じった言葉だとは気づいていた。ただ、救いなのは再度頭は剃らなくて良いという所だろう。
「良い方法があるぞエージェント・ワン。」
クリスが口を挟んできた。
とてつもなく嫌な予感がするが、聞いてみることにする。
「何だ?」
「彼女たちが調査を行うにも2~3日はかかるだろう。その間に髭を伸ばせ。私がそれに加えてカツラを作るから、それで印象を操作できる。」
良い方法でも何でもない。
それはありふれた手法だ。だが、一番効果的ともいえるだろう。
「そうだな。2~3日だと大して髭は伸びないが、それが一番良さそうだ。」
こうして、俺はまた変装をすることになったのだった。
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新作、「芒星の勇者 ~勇者として召喚されたけど、好き勝手に生きて何が悪い~」も同時連載中です。こちらもよろしくお願いします。
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