第4章 朋友 「再びの大地⑩」
いくつかの村に立ち寄り、ようやく街と呼べる場所を訪れることができた。
この大陸に戻ってきてから数日が経過していたが、焦って先を急ぐよりも現状を把握する方が良いと思えてきていた。
到着して早々に各自で聞き込みを行い、昼食のために再び合流して情報を交換しあった。
「大した情報はなかった。しかし、英雄テトリアの噂を知る者が1人だけいたぞ。」
ファフがそう言うように、短い旅路だが少ないながらもテトリアについての噂を口にするものがいた。
この街はこれまでの村とは違い人が多い。
村人の場合、話好きな者や余所者との会話に飢えているものがいれば情報を聞き取りやすいのだが、街ともなるとそれぞれに忙しくしていたり他者に対して無関心な者が多くなる。
夜になれば酒場などで情報収集をする手段はあるのだが、昼間はなかなかに難しい部分があった。
「嫌な噂か?」
「抽象的な内容だな。英雄テトリアは、実は自己中心的で女好きだったみたいな。」
叙勲式での出来事から様々な形で噂が広まっているのでは思っていたが、あの場にいたのは各国の王族や貴族だ。市井にまで詳しい内容は広まっていない。
ただ、流れている噂の内容はひどいものだった。
英雄テトリアの正体は色欲の化身だったとか、世間知らずのバカ勇者などと言う者もいた。
おそらくだが、貴族の御用聞きである商人あたりが、仕入れた情報を世間話として様々なところで流した内容が脚色されて広まったのではないかと思う。
「タイガ様のことは耳にしていませんから大丈夫でしょう。」
「まあ、それが救いではあるが···貴族や教会あたりにどう思われているかが問題だな。」
歓迎よりも警戒の対象に思われている気がした。
実際に俺を知るものであれば極端な態度はとらないだろうが、ずっと敬っていた英雄の本性が最低な野郎だったと噂されているのだ。
それと深い縁があると目されている俺も、同じように思われていて不思議はない。
「別にどう思われていても良いんじゃない?タイガはタイガだし。」
ソルはそう言ってくれるが、敵対するまでもないが協力はしかねるというスタンスの者が多いのではないかと予想された。
魔族や悪魔の脅威が迫った場合、そういった意識が行動を阻害する可能性が考えられるのだ。
「とりあえず、これから向かう方角を決めよう。」
この街では紙が高額なので、代わりに仕入れてきた羊皮紙にざっくりとした地図を書き記した。
「今がこの辺りだ。俺が立ち寄ったことのある都市とは逆の方角に来ている。今日はこの街で一泊して、明日からは南南西を目指そう。」
全員が土地勘がないため、集めた情報に従って知っている都市を目指すしかなかった。
ついでに夜の街でも情報収集を行い、一つでも有益なものを得ようと思っていた。
因みにクリスは話には参加せずに、ずっと何かの図面を作成していた。
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新作、「芒星の勇者 ~勇者として召喚されたけど、好き勝手に生きて何が悪い~」も同時連載中です。こちらもよろしくお願いします。
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