第4章 朋友 「再びの大地⑥」
ヴィーヴルは、四方の守護者の存在とグルルの関係、そしてタイガがどういった存在であるかを如実に語った。
「では、タイガは人という存在を超越していると···。」
「そうとも言えるし、そうでないとも言えよう。あやつの心は人そのものだ。数奇な運命に翻弄されてはおるがな。」
「·····························。」
「案ずることはない。タイガは俗な考えは持っておらぬだろう。目的を果たせば、人としての営みの中で生きることを望むと思うぞ。」
「···タイガの目的というのは?」
「人に災いをなす邪神を退けようとしておる。あやつにとって、魔族や悪魔と対峙することは、その一端に過ぎぬと言えるだろう。」
ざっくりとではあるが、サキナは理解した。
叙勲式の日以来、テトリアの本性を垣間見た者たちの中には、タイガに対して不信の念を抱く者も少なからず出ていた。
テトリアとタイガは表裏一体。
一部とはいえ、そのように危険視されていると言ってもいい。
だが、ヴィーヴルの話を聞く上では、タイガは何も変わっていない。
むしろ、神の領域にいる存在を相手どって、孤軍奮闘していると言ってもいいだろう。
魔族や悪魔だけでも手に余る人間にとって、邪神という脅威は不可避な存在だ。
それを退けようとする意志の強さは、想像し難いものである。
しかし、サキナの知っているタイガらしさとも言えた。
何者にも屈しない精神の強さ。
ふと、人懐っこい笑顔を思い出した。
「ヴィーヴル殿。加護者となれば、タイガの一助となるのだろうか。」
「加護者に至ったとして、邪神に匹敵するような力を持てる訳ではない。しかし、タイガと共に歩むのであれば、その一翼を担うことはできよう。」
「ならば、お受けしたい。そのための試練があるのであれば、それに挑もう。」
「ふむ。その意志が及第と言えよう。」
ヴィーヴルがゆっくりと目を閉じる。刹那、目映い光が周囲を照らした。
サキナは体の内部に沸き起こる力と、脳内に知識の奔流が始まるのを感じた。
「加護者の使命とタイガの意志は同義と言えるだろう。あやつと共にいれば、自ずとその機会を得ることになる。」
一瞬の後、光と共にヴィーヴルの姿は消えていた。
「··································。」
今の遭遇が幻でないことは、サキナの中に宿った力が示していた。
口元が綻ぶ。
「これで···並び立てる。」
サキナは両拳をぎゅっと握り、踵を返した。
先ほどまでの憂いは跡形もなく消えていた。
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