第3章 絆 「炎帝ロゥズル⑫」
「待たせたな。」
炎帝ロゥズルが再びこちらに声をかけてきた。
「もう良いのか?」
「滞りなく終わった。ファラフナーズは、加護者としての力を取り戻した。」
ファフの方を見てみる。
確かに、纏うオーラのようなものが性質を変えたように思える。
目が合うと、不敵な笑みを浮かべだした。
豪快ともいえるその表情は、自信を取り戻した内面を表しているのかもしれない。
自然と笑みを返していた。
ファフらしさが出ているようで、なぜか嬉しさが込み上げてきたのだ。
「外にも仲間がいるのであろう?この先に進むのであれば、共に歩むが良い。」
そう言った炎帝ロゥズルは、炎へと身を変えてファフの周囲を一周するかのようにして消えていった。
それと同時に、俺の中に記憶のようなものが流れ込んできた。
この神殿と祠に関する知識。
膨大な量ではないが、その存在意義と神界に至る扉についての理解が進む。
炎帝ロゥズルは、ここでの役目を終えて自らの居所に戻ったようだった。
同時に出現した結界が、この神殿を囲っていることがわかる。
悪しきものを妨げ、侵入を拒む結界。
俺やファフと会ったことで、この場に留まる理由がなくなったのだろう。
「タイガ様。」
神殿内に入ってきたマルガレーテに声をかけられた。
ソルやクリスも一緒だ。
「炎帝ロゥズル様からの言葉を受けました。共に神殿内を歩めと。」
そう言いながら、マルガレーテはファフを見て微笑んだ。
同じ加護者として、ファフが復帰したことに気がついたのだろう。
「何というか···古代の遺跡臭がするね···。」
クリスが意味のわからないことをつぶやいている。
一応、神殿とは広義で神の住居とされているのだから、罰あたりなことを言っていると思えるのだが、科学者らしい発言といえばそうなのかもしれない。
「ここ・・・見覚えがある。」
ソルはやはりここに来たことがあるらしい。
キョロキョロと辺りを見渡し、四方の守護者を模した像を見ていた。
「進もうか。」
そう言って、みんなを促して歩を進める。
ベチャっ!
奥に通じるアーチを潜った時に、異音がした。
振り返って見ると、一番後ろにいたクリスが愕然とした表情をしている。
続いて、奇妙な動きを始めた。
「「「「·································。」」」」
まるで、見えない壁があるかのようなパントマイムのような動きをしている。
「何をしている?」
「く···これ以上、進めないのだ。見えない壁のような物が、私の行く手を遮っている!」
クリスは、こういったジョークは言わない奴だ。
他の3人の様子を見てみるが、特に異変はないらしい。
・・・余計な事を言うから、罰があたったのか?
「たぶん、先に進むことができるのは、限られた者だけのようですね。」
マルガレーテの言葉で理解をした。
ここにも何らかの結界が張られているのだ。
悪魔の本質を持っているソルは普通に通れるようだが、クリスは無理なようだ。
「仕方がないな。クリスはそこで待機をしていてくれ。ここには結界が張られているから、身の危険はないはずだ。」
「············································。」
なんとも言えない顔をするクリスだが、いつまでも彼にかまってはいられない。
俺たちはクリスを放置して、先に進むことにした。
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新作、「芒星の勇者 ~勇者として召喚されたけど、好き勝手に生きて何が悪い~」も同時連載中です。こちらもよろしくお願いします。
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